
米陸軍の次世代分隊火器(NGSW)であるXM7ライフルとXM250自動ライフルに標準搭載される照準システム「XM157 Fire Control」に問題がある事が判明した。NGSWは2023年から納入が始まり、2025年から本格化する予定だが、今後の調達にどのような影響があるのかは現時点では不明だ。
ミリタリー・コムの報道によると先週発表された、国防総省の運用試験評価局長による陸軍の次世代小隊火器(NGSW)プログラムに関する2024年度報告書で、同プログラムのXM7ライフルとXM250自動ライフルを補完することを目的としたXM157火器管制システムが、昨年のテスト中に兵士から否定的な評価を受けたことが示された。報告書には兵士らが「XM157の使い勝手を平均以下/不合格と評価した」と明記されている。その詳細は公開されていないが、「XM157を搭載したXM7は、重大な故障を起こさずに72時間の戦時任務を完了できる可能性が低いことが実証された」と運用試験評価報告書は付け加えている。つまり、XM157が戦闘を想定した3日間のテスト中、正常に稼働しなかった事を意味しており、その問題がXM7ライフルの性能にも影響している事が分かる。銃の精度や射程、光学機器が進化し、交戦距離が延びた現代、命中確率を高め、交戦時間を短縮する照準システムはライフルの必須装備になっており、戦場で不具合を起こせば致命的な状況に陥る。
XM157 Fire Control

XM7とXM250には照準システムとして「XM157 Fire Control」が搭載されている。これはSheltered Wings Inc.とVortex Opticsによって開発製造されている。XM157は高耐久性を備えた高度な電子光学機器で、変倍光学系 (1×8) 、バックアップエッチングされたレチクル、レーザー距離計、弾道計算機、大気センサー、コンパス、兵士間ワイヤレス、可視および赤外線照準レーザー、デジタルディスプレイオーバーレイなど、数多くの先進技術が組み込まれており、接近戦、中長距離での正確性と殺傷率を高める。ワイヤレス接続機能も備わっており、陸軍の新しい暗視ゴーグル「ENVG -B」や将来の統合視覚増強システム「IVAS」などの光学ディスプレイ間で兵士の視覚情報を共有する事もできる。陸軍は10年間で約27億ドルをかけて最大25万台のXM157システムを調達する事を計画。予算文書によると、陸軍は2025年度までに5万161台のXM157システムの調達に約5億8464万ドルを費やしており、今後数年間で合計12万4749台を調達する計画だ。
NGSWはM4カービンライフル、M249軽機関銃を置き換える目的で開発された分隊火器で2022年4月にSig Sauer社が開発する銃が採択され、XM7ライフルとXM250自動ライフルと名付けられた。両ライフルはこれまでの標準口径である5.56mm、7.62mmのどちらもでない新しい6.8x51mm口径を採用。そして共通の新しい光学デジタル照準システム「XM157 Fire Control」が搭載される。
最初のバッチは2023年9月に陸軍の第101空挺師団と第75レンジャー連隊の兵士に納入され、2023年10月から運用デモンストレーション(Ops Demo)を実施。殺傷力、信頼性、戦闘性能を評価した。2024年2月には寒冷気候での試験を完了し、第101空挺師団第506歩兵連隊第1大隊が2024年3月に正式に配備を開始している。熱帯および高温環境での追加試験はこれからで2025年度に予定している。報告書ではXM7とXM250で使用された6.8mm弾は、M4とM249で使用されている従来の5.56mm弾よりも「殺傷力が増している」と結論づけており、米軍が期待していた殺傷能力の向上は問題ないとされ、XM7とXM250にも特段問題なかった事が伺える。しかし、その殺傷能力も弾が標的に当たらなければ意味がなく、XM157の問題が致命的なのか気になるところだ。ただ、光学機器は他でも代用が利く、XM7、XM250はともにレールシステムにピカティニーレールを採用しており、既存の照準システムの搭載は可能だ。