中国は戦争が始まった際、航空基地、飛行場が真っ先に攻撃を受ける事を想定し、2010年以降、飛行場の防衛、拡張、強化に多額の投資を行ってた。そして、今やそれは東アジアの米軍とその同盟国を上回ると報告されている。
ワシントンD.C.を拠点とするアメリカのシンクタンク「ハドソン研究所」は7日に公表した報告書で、2010年以降、中国は将来の戦争に備え、航空基地、飛行場の拡張と防衛強化に多大な投資を行い、今やその能力は米軍を上回り、中国周辺の米国の同盟国の航空基地を含めても不均衡が生じている事が明らかになった。
レポートによれば中国人民解放軍は、戦争が発生した場合、真っ先に空軍基地、飛行場が激しい攻撃を受けることを想定しており、飛行場の防衛、拡張、強化に多額の投資を行ってきた。2010年代初頭以降、軍用飛行場のコンクリート製の防護強化型掩体壕(HAS)と非強化型掩体壕(IAS)を2倍以上に増やし、民間または商業用飛行場を除いて、HASが800以上、IASはの数は2300以上と中国の航空機掩体壕の総数は3,000を超えている。中国軍が現在保有する戦闘機・攻撃機・爆撃機の総数が2500機程とされるので、収容する上では十分な数があり、今後の増産をふまえても十分なバッファがある。中国は現在、台湾海峡から1,000海里(1852km)以内に134の空軍基地を保有しており、これらの飛行場には650以上のHASと約2,000のIASが設置されており、そのほとんどが特定の地域に集中している事が分かる。中国はまた、滑走路を20本、滑走路長の誘導路を40本以上追加し、全国のランプエリアを約75%拡大している。
中国とは対照的に、米軍の飛行場拡張および強化の取り組みは、冷戦中、現在の中国の行動と比較すると控えめであると報告書は述べている。2010年代初頭以降、台湾海峡の1,000海里以内、および韓国以外の飛行場を調査した結果、米軍が新設したのはHASが2基、IASが41基、滑走路1本と誘導路1本、ランプエリア17%の増加にとどまっている。台湾以外の同盟国およびパートナー国の飛行場のランプエリアも含めると、台湾海峡の1,000海里以内にある米国、同盟国、パートナー国を合わせた飛行場の容量は、中国のおよそ3分の1である。韓国の飛行場を除くと、この比率は4分の1に低下し、フィリピンの飛行場がなければ、さらに15%に低下する。台湾海峡の1,000海里以内の米国の同盟国及びパートナーというのはおそらく日本、台湾、韓国、フィリピンを指しており、15%という数字は台湾及び、日本の大阪より西を指すと推測する。
台湾有事が発生した米国が台湾を守るかどうかは不透明だが、参戦すれば、米中間の大規模な攻撃の応酬が懸念される。米軍が日本、フィリピン、韓国、台湾の軍用飛行場を使用したとしても中国軍との戦力的不均衡は約25%と報告書は分析しており、日本の飛行場のみ使用した場合はこの不均衡は88%まで増加する。中国の飛行場を無力化するために費用な弾薬は3000発以上と分析しているが、日本、フィリピン、韓国、台湾の飛行場全てを無力化するのに費用な弾薬は2500発程と分析されている。特に日本は航空自衛隊を含めHASがほとんどなく、防衛に弱いとされ、200~300発ほどで無力化されると分析。山口県にある日米共同基地である岩国基地は僅か10発程のミサイルで米軍を無力化できるという。岩国には米海軍のF-35Cや米海兵隊のF-35Bが配備されている。
それに対し、隣国の脅威に長年晒されてきた韓国や台湾はHASや地下格納庫の建設など飛行場の強化に独自に力を入れており、韓国と台湾の飛行場の無力化にはそれぞれ1500発、1000発が必要と分析されている。
ハドソン研究所は、戦争が始まった際に最初の標的となる可能性が高い空軍基地の耐久性を強化するようワシントンに要請している。報告書はまた、米軍に対し、より遠方からでも運用でき、飛行場への攻撃に対する脆弱性を軽減できる長時間飛行可能な航空機への投資を促している。航空基地の強化は我が国にも言える事で『空自15分全滅説』は昔から言われている。空自の掩体壕は、青森の三沢基地で40機分、北海道の千歳基地と石川の小松基地にそれぞれ20機分があるだけ。場所から分かるように、これらは冷戦下でソ連による攻撃を想定したもの。中国から真っ先に狙われる西日本の空自基地に掩体壕はない。攻撃を受ければ、早々に全滅する可能性がある。