中東レバノンでポケベルや無線機が一斉に爆発して少なくとも21人が死亡、3000人以上が負傷した。これはイスラエルの仕業とされており、あらかじめ仕掛けられていたトリガーを用いて起爆させたとされている。
🚨🇱🇧 WIDE SCALE TERRORIST ATTACK ON LEBANON
— Expat Vibes (@expatvibes) September 17, 2024
Thousands of pagers simultaneously exploded all over the country, causing mass injuries, and 8 deaths so far. pic.twitter.com/JdmLQsG83f
レバノン国内で17日と18日に通信機器が一斉に爆発し、3000人が死傷した事態は、レバノンに大きな衝撃と不安を与えている。17日に爆発したのはレバノンの武装組織ヒズボラの構成員が所持していたポケットベルだ。「この時代にポケベル?」と思われるかもしれないが、イスラエルとの抗争が激化する中、ヒズボラはイスラエルによるハッキングによって隊員の位置情報を傍受される事を避ける為、ヒズボラの最高指導者ナスララ師は今年2月、スマートフォン所持を禁止し、代わりの通信手段としてポケベルを所持するように命令を下した。1990年代に流行ったポケベルはメッセージの受信はできるが通話や発信はできないと現代の通信手段としては全く不便だが、無線でメッセージを発信するため、携帯電話のように相手を探すしくみはなく、受信者の位置情報が割れる事はない。ヒズボラはこれを構成員に配布、数は数千台に上るとされる。
問題はイスラエルがどうやってポケベルを爆発させたかだ。ポケベルは爆発前に過熱したとされ、組み込まれたマルウェアによって、機器が発熱、バッテリーが爆発した。または高性能小型爆弾が組み込まれていたのではないかと言われている。ニューヨーク・タイムズ紙によれば無線呼出器のバッテリー横には28~56g爆発物が組み込まれており、遠隔で爆発させるスイッチも内蔵されていたされ、あらかじめポケベルに爆発物が組み込まれていた可能性が今のところ高い。ヒズボラによると、爆発直前、ポケベルにはヒズボラ指導部が送ったメッセージと見える内容が表示されたというが、これは指導部からではなく、爆発のトリガーとなるものだっとされ、受信後直ぐにポケベルは爆発した。
しかし、爆発物が組み込まれていたとしたら、どうやってイスラエルがそれを成したかだ。爆発したポケベルには台湾のゴールド・アポロ社のロゴが表示されていたが、同社はライセンスと商標の使用許可を与えただけで、自社で生産したものではないと否定。同社はヒズボラが使用していた物はハンガリー・ブダペストに拠点を置くBACコンサルティングが製造したと明らかにしている。しかし、BACコンサルティングはあくまで仲介人であると述べており、生産はまた別の会社とされる。登記上はBACの従業員はCEOだけで、社名と規模からも事業はコンサルティングが主と思われ、おそらく大量のポケベルが欲しいという依頼を受けて、ゴールド・アポロ社からライセンスを供与を受けて、OEMという形で、生産設備を持つ会社に生産を依頼したのではないだろうか。ポケベルがどこで生産された物かは明かされていない。BACコンサルティングとヒズボラが直接契約していたのか不明だが、BACからゴールド・アポロ社へ支払われたライセンス料は中東経由だったと同社は明かしている。
ヒズボラの構成員にポケベルが配布されたのは最近と言われている。そして、ポケベルを使うように告知を出したのが2月だ。その間、6か月ほどしかない。おそらくイスラエル諜報機関であるモサドはヒズボラがポケベルを調達しようとしている情報を得て、調達元を把握。なにかしらの報酬をちらつかせ、ポケベルにトラップを組み込む事に成功したのだろうか。事件後、BACコンサルティングのCEOはまだ表に出てきていないが、もし、BACコンサルティングが関わっているのであれば、CEOが今後、顔を見せることは無いだろう。
また、ポケベルが爆発した翌日18日には今度は無線トランシーバーが爆発している。当初、爆発した無線機に張られていたラベルから日本の無線通信機器アイコム製の「IC-V82」とみられていたが、同社は同モデルについて、約10年前に販売を終了したと説明。バッテリーの生産も終え、偽造品防止のためのホログラムシールが貼付されていないことから、模造品とされている。これもポケベル同様、製造過程で何かしらの爆発物が組み込まれていた可能性が高い。この他、太陽光発電システムの爆発も報告されている。
イスラエルとレバノンの戦闘はイスラエルによるガザ侵攻以降激化しており、今年7月にはイスラエル軍の空爆により、ヒズボラの司令官が殺害されており、全面戦争が危惧されていた。このタイミングで通信網の遮断を行ったのは、全面戦争が近づいている、イスラエルによるレバノン侵攻の予兆との懸念がある。イスラエルは今のところ、今回のレバノンの爆発について、何もコメントを発信していない。