このままロシア軍が進軍を続ければウクライナの鉱物資源・レアメタルが奪われる

ウクライナには世界最大級のチタンと鉄鉱石の埋蔵量、未開発のリチウム鉱床やレアメタル、そして大量の石炭鉱床がある。もし、このままロシア軍の進軍を許し、ウクライナの領土が奪われれば、これら大量の鉱物資源がロシアに渡り、ロシアはそれを輸出し潤い、西側は貴重な鉱物供給元を失う事になる。

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エストニアのマルグス・ツァクナ外務大臣は2月1日、「ロシア軍の進撃が成功した結果、西側諸国はウクライナの重要な資源を失う可能性があり、その資源はロシアに移譲される可能性がある。」と警告を発した。同氏によれば、世界中で鉱物資源、特にレアメタルの依存度が高まっているなか、ウクライナの埋蔵量は膨大だという。ウクライナは米国へのチタンとマンガンの主要輸出国の一つであると彼は指摘した。しかし、これらウクライナの資源が「現在のウクライナの最前線に非常に近い」と強調した。

現在、戦線はロシア軍優勢であり、ゆっくりではあるが徐々に制圧地域を増やしており、このままロシア軍の進軍を許せば、こられ鉱物資源が埋蔵されている地域が占領され、ロシアに奪われることになる。「もしこれらの領土がロシアの手に落ちれば、モスクワとその同盟国は莫大な財宝を自由に使えるようになるだろう」と同氏はナショナル・インタレスト誌の取材で述べ、西側諸国にウクライナへの継続的な軍事支援を訴えた。

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ウクライナは天然資源の宝庫でウクライナ・インベストによると石炭、鉄鉱石、天然ガス、マンガン、塩、石油、グラファイト、硫黄、カオリン、チタン、ニッケル、マグネシウム、木材、水銀の埋蔵量で世界トップクラスだ。ウクライナはヨーロッパ最大のチタンとリチウムの埋蔵量を誇っており、チタンは埋蔵量で世界第11位でエンジンや船体部品に使用され、航空宇宙、自動車、海洋産業にとって重要な資源だ。リチウムは世界の埋蔵量の1%を保有。これは、ヨーロッパの供給量の30%に相当する。電池、セラミック、ガラスに重要な資源で、電動化進みバッテリー需要が広がる現代において、欠かせない資源だ。半導体、LED、太陽光発電製造に欠かせないガリウムは世界5位の埋蔵量、ゲルマニウムは世界第3位の輸出国で、世界中で不足している半導体において生産に必要なネオンガスの供給元の一つもウクライナである。天然ガス埋蔵量は欧州でノルウェー、英国に次いで3番目に多く、9050億立方メートルに及ぶ。その他、石炭、鉄鉱石、マンガン、塩、石油、黒鉛、硫黄、カオリンなど世界で知られている120種類の鉱物のうち117種類がウクライナに埋蔵されており、ウクライナ地質学者協会は、同国が世界の重要な鉱物資源の5%を保有していると推定しており、世界的な戦略資源の供給において重要な役割を果たす立場にある。ウクライナにおいても鉱業は国家経済の重要な構成要素になっており、これが無くなれば経済的自立が難しくなり、戦後の復興に支障をきたすことになる。

しかし、これら鉱物資源の鉱床の多くはロシアが制圧しているウクライナ東部に集中している。1月27日、ウクライナ軍の元司令官ヴィクトル・ムジェンコ氏は、ドネツク州、ルハンシク州、ザポリージャ州、ヘルソン州と4つの地域を失ったことでウクライナは天然資源の半分を失ったと発言している。カナダのシンクタンク「SecDev」の分析によると、ロシアが押収した埋蔵量の価値は2022年の分析時点で12兆4000億ドル規模に達しており、その価値は現在、更に増加しているだろう。

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侵略、奪った土地という事もあり、ロシアは環境や住民への影響など一切気にすることなく未開発の鉱床を開発、採掘する事が懸念される。それを輸出し、多額の利益を得て、その資金で戦争で失われた軍事力を復活させ、経済を立て直すだろう。これらの資源を西側はもちろん買う事はしないが、その代わりに安価で中国に渡る事が懸念される。その結果、中国産業は世界市場で競争力を強め、逆に西側諸国はウクライナという重要な資源供給国を失い、産業界の原材料不足はより深刻になり、多くの産業がコスト増になる事で国際競争力を弱める事になる。

ウクライナ東部だけでも、その資源がロシアに渡ればロシアは天然資源大国としての地位を更に高めることなり、西側は経済的にロシア・中国陣営に敗北する事になるかもしれない。それもあってか、ウクライナへの軍事支援の継続に消極的だったトランプ大統領は2月3日月曜、大統領執務室で記者団に対し、「私はレアアースの安全を確保したい。我々は数千億ドルを投入している。彼らは素晴らしいレアアースを保有しており、私はレアアースの安全を確保したい。」と対ロシア戦争における米国の継続的な支援と引き換えに、ウクライナは米国に希土類鉱物を提供すべきだと述べたと報じられている。

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このままロシア軍が進軍を続ければウクライナの鉱物資源・レアメタルが奪われる
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