緊迫の度合いが日に日に高まるウクライナ情勢。ロシアによる侵攻が現実味を帯びる中、NATOを始めとした各国のウクライナへの軍事支援が活発化している。
アメリカ
The 1st bird arrived.All Ukrainians highly appreciate 🇺🇸 help in strengthening 🇺🇦 defense capabilities.Thanks to our strategic partner&personally to @secdef Lloyd Austin III for the unwavering support. To be continued @WhiteHouse @congressdotgov @USEmbassyKyiv @UKRintheUSA pic.twitter.com/6iPcpHtmc7
— Oleksii Reznikov (@oleksiireznikov) January 22, 2022
最大の支援国はアメリカだ。今月22日には2億ドル、80トンにおよぶ武器をウクライナに届けた。そのメインとなるのが「SMAW-D」になり、米軍内では”M141掩蔽壕破壊弾”と呼ばれる兵器だ。主にバンカーやトーチカ、要塞化された建物を破壊するための使い捨て携行式ロケットランチャーになり、有効射程最大1000m、200mm厚のコンクリート、2.1m厚の土嚢を貫通破壊する威力を有する。弾頭には対人・対装甲両用榴弾が使用されているので軽装甲の車両にも有効だ。また、対戦車兵器として2018年から対戦車誘導ミサイル「ジャベリン」を提供している。ジャベリンは世界最強の携行式対戦車ミサイルで、射程は2000mと長く、セルフ誘導・撃ちっぱなしのファイア・アンド・フォーゲット、そして、トップアタックといわれる戦車の最も脆弱な砲塔を上面の装甲を狙って撃つことができる。最近でも2021年10月に追加の30基を提供している。また、船舶数が乏しいウクライナ海軍に16隻のMarkVI哨戒艇、さらに所有するソ連製のMi-17ヘリコプターを提供することにも合意している。2014年のロシアによるウクライナのクリミア併合以降、アメリカはウクライナに対し総額27億ドル以上の軍事支援を供給、予定しており、これまで弾薬、軍事車両など様々な兵器が供給されている。
イギリス
🇬🇧 передала #ЗСУ легкі протитанкові засоби
— Defence of Ukraine (@DefenceU) January 18, 2022
Це зміцнюватиме 🛡 спроможності України, а надані засоби будуть використані виключно з оборонною метою pic.twitter.com/ipGpqPfInG
アメリカに次ぐ支援国がイギリスになる。イギリスは今月、C-17輸送機一杯に積んだ2,000基の対戦車ミサイルと陸軍の特殊部隊レンジャー隊員30人をウクライナに運んだ。特殊部隊員はウクライナ軍に協力して戦闘参加というよりは主に兵器の扱い方や戦闘訓練が目的と思われる。届けられた対戦車兵器はイギリスとスウェーデンが開発した携行式短距離対戦車誘導ミサイル「NLAW」。射程は600mとジャベリンと比べると短いが、対象を数秒間ロックオンすることで移動体を追尾攻撃でき、トップアタックも可能。ロシア軍の主力戦車の一つであるT-72を破壊する威力があることは実証されている。
両国の支援をみると対戦車兵器が大部分を占めているのが分かると思う。陸続きであるウクライナとロシアは開戦当初から激しい地上戦が予想されるのと、ロシア軍は米国をも凌ぐ世界最大の地上部隊を擁しており、戦車の数は1.3万両、戦闘装甲車は3万両にも及ぶ。それらの脅威に対抗する上で携行式の対戦車兵器は訓練もさほど必要なく、手っ取り早く対戦車能力を増強できる手段になる。
ウクライナ情勢が緊迫化している。ロシア軍はウクライナ国境地帯に10万人規模の部隊を集結させており、今も多くの部隊が続々と集結しており、ロシアによるウクライナ侵攻がいつ始まってもおかしくない状況だ。Global FirePowerに[…]
バルト三国
そして、支援国として以外なのが小国のリトアニア、エストニア、ラトビアのバルト三国だ。これらの三国はウクライナへの支援としてジャベリン、そして携帯式防空ミサイルシステムのスティンガーを提供することを決めた。これらを提供するには米国の承認が必要で、米国に承認するよう要請、先日、承認された。エストニアは2020年7月に2400丁ものマカロフPM拳銃をウクライナに供給している。バルト三国は過去にソ連(ロシア)に占領された過去があり、現在もロシアとの国境付近で領有問題を抱えている反ロシア派の筆頭。ロシアによるクリミア半島の併合に関して反対しており、ウクライナの主権と領土の回復を支援する立場をとっている。三国はウクライナと違い、NATOに加盟しているもののロシアと国境を接しており、ウクライナがもし、ロシアに陥ちることになれば、明日は我が身という危機感があるのかもしれない。
支援に否定的なドイツ
その他、ベラルーシを挟んでロシアの脅威の前線にあるポーランドもウクライナへの武器供給に同意。カナダは特殊部隊を派遣、デンマークはバルト海にフリゲート艦、リトアニアにF-16を派遣。スペインは地中海に艦船、ウクライナに近い東欧のNATO諸国に戦闘機を派遣、同じくフランスも東欧に部隊の派遣を表明。オランダはブルガリアにF-35戦闘機を派遣する。これらの支援は今後、拡大していくだろう。その隣国で欧州、NATOの盟主ドイツは一線を画しており、ウクライナの支援の要請に対し、非兵器の野戦病院の設備の提供や傷病兵の治療受け入れは承認しているものの武器供給は拒否。イギリスがウクライナに武器を積んだ輸送機を飛ばした際も領空の通過認めず、エストニアがドイツ製武器を送ろうした際も輸出を阻止した。先日には海軍司令官が「ロシアによる侵攻はない。ウクライナがクリミアを取り戻すことは二度とない」とEU、NATOの意向と反する発言して辞任している。NATO各国が次々と支援を表明するなか、NATOが一枚岩ではないことを浮き彫りにしてしまった。
これらの支援はウクライナ侵攻には莫大な時間と費用、そして多大な犠牲を伴うことをロシア、そしてプーチンにわからせる目的がある。これらの兵器が使われずに全て無駄で終わるといいのだが。
https://www.dw.com/en/germany-blocks-estonian-arms-exports-to-ukraine-report/a-60520988