セルビア国防省が282台のT-55戦車をパキスタン軍に売却したとセルビアのメディアが報道した。取引額は数千万ドルになる。なぜ、今更ながら、こんな古い戦車を購入したのだろうか?
T-55戦車は三世代前の戦車
T-55戦車はソ連で開発された100㎜ライフル砲を搭載する中戦車になり、第二次大戦後の1956年に登場した戦後初の主力戦車になる。いわゆる第一世代主力戦車といわれる世代だ。しかし、今は第3.5世代主力戦車が各国の主力になっている。自衛隊の10式戦車もそれに入る。ロシアでは既に第四世代のT-14アルマータが登場しており、T-55は三世代前のとても古い世代の戦車だ。とはいえ、戦車大国のソ連が開発したT-55は当時、最強の戦車といわれ、同型のT-54と合わせて10万輌も製造された。冷戦時には東側諸国の主力戦車と配備され、今でも多くが現役で活躍している。中古戦車としての売買も盛んでロシア・東ヨーロッパでお役御免になったT-55はアフリカや中近東の国々に売買されている。軽武装の民兵や反政府組織を相手に戦かう、これらの国々ではT-55はまだまだ有効な戦力であり、安価に入手できるので人気だ。シリア紛争でもシリア政府軍の主力戦車の一つして使用されている。
パキスタン軍が購入した理由
パキスタン軍の主力戦車の一つに59式戦車がある。これは中国がT-54/55をライセンス生産した戦車になる。つまり、T-55と全く同じ戦車ということだ。パキスタン軍は59式を近代化改修したT-59M11とアル・ザラール(写真上)を配備している。主砲や装甲、 砲安定装置(スタビライザー)、エンジンのバージョンアップを行い、GPSに暗視装置などを追加している。 アル・ザラールはカシミール紛争などで争う隣国インドの主力戦車である第三世代のT-72に対抗できる第三世代近代化改修が施されている。今回購入した282台のT-55戦車も近代化改修を行う予定になっている。