ロシアが誇る第5世代ステルス戦闘機Su-57フェロン。レーダーに検知されにくい高いステルス性が売りの機体だが、そのステルス性を無視する形で、外部パイロンに2基のミサイルを搭載しての運用が確認された。
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— Oeil d’Horus NMW (@OeilHorusNMW) October 20, 2024
👀 Le chasseur Su-57 de cinquième génération équipé de deux missiles Kh-59 vole quelque part… 🙃🤙 pic.twitter.com/znBWO07551
最近の目撃情報によると、ウクライナを空爆するロシア航空宇宙軍のSu-57フェロン戦闘機がステルス機としては異例の運用を見せていることが明らかになった。目撃されたSu-57は翼下に2基のKh-59M2巡航ミサイルを搭載した状態で、前線近くを飛行、戦闘に参加していたとされる。通常、ステルス機は機体全面をステルスコーティングし、レーダー反射断面積(RCS)を最小限に抑えるため、ミサイルといった兵装はハードポイントといった外部パイロンではなく、全て機体内部に収納するウェポンベイに搭載するように設計されている。これはSu-57はじめ、アメリカのF-22、F-35、中国のJ-20と現在、現在のステルス戦闘機共通の仕様だ。今回、目撃されたSu-57のように外部にミサイルを搭載すると、機体のRCSは増え、ミサイルがレーダーに検知されることになり、ステルス性を大きく低下させる事になる。これはステルス機であるSu-57の最大のメリットを損なうことになる。
ステルス機は脅威の高い空域での運用を目的に莫大な費用をかけて開発生産されており、今回、目撃されたSu-57はそれに反する行為であり、これでは、第4世代戦闘機とさほど変わらない。なぜ、このような運用しているのか。多くの軍事専門家は首をかしげている。
Su-57用に開発されたKh-59Mk2巡航ミサイル
Kh-59はソ連時代の1980年代に開発された航空機搭載用の空対地/巡航ミサイル。登場以降、何度も改良が重ねられており、1990年代には射程115km、大型弾頭を搭載したKh-59Mが登場。そして、今回、Su-57に搭載が確認されたKh-59M2はその改良型で新型のTV/IIRシーカーを搭載している。同ミサイルはSu-24M、Su-25、Su-30、Su-34に搭載可能だが、Su-57を開発するにあたり、Su-57のウェポンベイにも収納可能なKh-59Mk2を開発する。機内に収まるようサイズを小さくし、弾頭も小型化。またステルス戦闘機から非ステルス兵器を発射する際、ステルス戦闘機の位置が明らかになる可能性もあったため、更にミサイル自体も視認しにくいようステルス設計にした。このようにSu-57にはそのステルス性を最大限に活かすための兵装が用意されているのに、ロシア空軍はそれを無視した形で運用しているのだ。しかし、これにはロシアの苦しい台所事情がある。まず、Kh-59Mk2は小型化した事で威力が低下している。また、ステルス性を備えたミサイルは通常型より、コストが高い。威力も弱い上にコストが高く、費用対効果は非常に悪い。
Su-57は生産停止
Su-57が専用ミサイルを搭載しない、できないもう一つの理由が機体数だ。高度なステルス性能と最新のアビオニクスを搭載するSu-57の生産は西側製部品に依存していた。しかし、2014年のクリミア併合によって受けた経済制裁により、部品調達が滞り、ウクライナ侵攻で完全に断絶される。それでも、中国などから代替え部品を調達するなど何とか生産を続け、2022年に10機、2023年にさらに11機の量産モデルを納入したとされ、現在、Su-57の生産数は30機を超えるとされる。しかし、その内の10機はプロトタイプになり、プロトタイプと量産機の各1機がテスト飛行中に墜落。更に今年6月のウクライナ軍のロシアのアフトゥビンスク飛行場への攻撃により量産機1機が損傷している。
Su-57の量産は2015年から始まっていたが、ウクライナ侵攻前まで2~3機しかなかったので、侵攻以降、生産数は大幅に増加した形だ。しかし、西側に依存していた機体は次第に部品調達が困難になり、生産コストも増大、イギリスのテレグラムなど、複数の西側メディアによれば、現在、Su-57の生産は停止されているという。つまり、僅か20機、しかも、今後の生産見通しが立たないSu-57のためにミサイルを生産するのは効率が悪い。
Su-57は当初、その貴重性から前線近くを飛行する事はなく、自国領空からのスタンドオフミサイル攻撃。また、護衛機を付けるなどして大切に運用されていた。しかし、最近はステルス無人機S-70の護衛として前線近くを飛行する事が確認されている。そして、今回のステルス性能を無視して前線で運用するなど、その扱いが変わりつつある。