ロシア海軍の北方艦隊は8日金曜、原子力潜水艦Project 09852 Belgorod(ベルゴロド)を受け取りました。ベルゴロドには核魚雷ポセイドン6発が搭載可能で「終末の日の潜水艦」とも呼ばれています。
ロシア国営メディアのTASS通信によれば、8日金曜、モスクワの北、セヴェロドヴィンスクにある北方艦隊の原子力潜水艦基地で行われた式典で、ロシア海軍北方艦隊にベルゴロド潜水艦が引き渡されました。式典に出席したロシア海軍の最高司令官であるニコライ・エフメノフ海軍大将は「ベルゴロド潜水艦は、ロシアが様々な研究を行い、世界海洋の遠隔地で様々な科学的遠征や救助活動を実施するのを助ける新しい機会を開き、さまざまな科学的問題を解決する。捜索救助活動を行うように設計された同艦は深海救助および自律型無人海中ドローンの運搬船としても使用できる。」と述べました。しかし、この原潜は研究や救助どころか、100メガトン級の核魚雷「ポセイドン」6発を搭載し、世界を破滅させることができる最悪最恐の「終末の日の潜水艦」です。
紆余曲折を経て足掛け20年をかけて建造
ベルゴロドはソ連時代に開発されたオスカー級の改良型であるオスカーII級原子力潜水艦として、ソ連が崩壊した翌年1992年に建造計画が始まりました。しかし、ソ連崩壊に伴う、混乱と経済危機により、建造計画は中止されます。しかし、2000年8月に北方艦隊に所属する同型のクルスクがバレンツ海において演習中に艦首魚雷発射管室で爆発が起き沈没。乗員が全員死亡する悲劇的事故を起こします。貴重な戦力を失ったロシア海軍はクルスクに代わる潜水艦としてベルゴロドの建造を再開します。しかし、ロシアの資金難は変わらず、80%が完成した2006年に再び建造が中断します。その後、2012年にプロジェクト09852という名のもと特殊作戦潜水艦として建造が再開します。
特殊作戦潜水艦として同艦は設計を大きく変更。新しいコンパートメントを追加し、船体は30m増加し、全長は184mに拡大。これは海上自衛隊のたいげん型・そうりゅう型84mの倍以上、米海軍のオハイオ級原子力潜水艦が170mを凌ぐ大きさであり、ベルゴロドは世界最大の潜水艦になります。ビームは15 m、最大変位が30,000トン。2基の加圧水型原子炉を搭載し、水中速度は32ノット(59km/h)の潜航深度500~520m。乗員120人で連続120日間潜航できます。
オスカーII型には核弾頭も搭載できる500~700kmの長射程のP-700対艦ミサイル24発を搭載していましたが、アメリカの弾道ミサイル防衛(BMD)の前では効果が薄いとしてベルゴロドにはBMDを回避するための武装が搭載されます。それが核魚雷の「ポセイドン」です。
100メガトンの威力を誇る核魚雷ポセイドン
ポセイドンは2015年に米国防省の発表によって明るみになり、2018年にロシアのプーチン大統領が開発を認めた大陸弾道間魚雷です。その大きさは全長20m、直径は1.8m以上、その重量は100トンとされます。魚雷としては最大の大きさで、従来の魚雷の30倍の重さになります。そのため従来の魚雷発射管に搭載することは不可能で、ベルゴロドはこのポセイドンを搭載射出できるように特別に設計されており、最大6基のポセイドンを搭載できます。
ポセイドンは最大100メガトンの核弾頭を搭載。魚雷ながら原子炉を搭載し、1万Kmを移動、ロシアから発射し、速度110〜130 km/hのスピードでアメリカの東海岸まで到達することができます。しかも最大潜航深度は1000mになり、検知、迎撃することはほぼ不可能です。隠密に沿岸部や港湾施設に近づき、物理的な大打撃を与え、更に広範囲な放射能汚染を引き起こします。また、一説には600m級の津波を人工的に起こすことが可能とも言われています。
ポセイドンの他にも無人水中ドローンのKlavesin-2R-PMを搭載、艦下部には全長30mのパルタス級特殊小型潜水艦、上部ハッチには深海を潜航できるBester DSRV小型潜水艇をドッキングすることができ、様々な小型潜水艦の母船として機能。水中探査・救助、さらに特殊部隊員を送り込む特殊作戦をこなすことが可能です。
ロシアの国家兵器計画の下、2027年までにベルゴロドと同型の潜水艦3隻がロシア海軍に納入される予定で、内、一隻は極東の太平洋艦隊、つまり、日本海に配備される予定です。
Source