アメリカ陸軍は8月29日、ジャベリン・ジョイント・ベンチャー(JJV)と13億ドルのジャベリン対戦車ミサイルを調達する契約を締結した。この契約にはウクライナに送られた分の4000発のミサイルの補充も含まれており、単年の契約としては過去最大規模になる。
米陸軍はロッキード・マーティン社とレイセオン社の合弁会社であるJJVと総額13億ドルの契約を締結した。この契約は、米陸軍向けのジャベリン対戦車ミサイル兵器システムの調達と生産サポートを提供するもので、ジャベリン・ミサイル計画の単年度調達契約としてはこれまでで最大規模であるだけでなく、契約には、ウクライナに送られた分のジャベリンを補充するための4,000発以上のミサイルが含まれている(ウクライナに供与されたジャベリンミサイルの総数は1万発を超えるとされる)。JJVは昨年、ジャベリンの生産体制を強化し、2026年後半までにミサイルの生産量をこれまでの倍の年間3,960発に増やす計画であると声明で述べている。
ロッキード・マーティン社の発表によると、JJVは最新の顧客の一つであるコソボを含む世界中の25以上の海外顧客をサポートしており、これまで5万発以上のジャベリンミサイルと1万2000基以上の再使用可能な発射ユニットを生産してきた。ロシアによるウクライナ侵攻が始まるとアルバニア、ラトビア、ルーマニア、ブルガリア、モロッコ、タイ、ブラジルを含む新たな海外顧客から多数の注文を受けることに。また既存顧客からの追加発注も相次いだ。JJV副社長兼ロッキード・マーティンのジャベリン プログラム ディレクターのデイブ・パンターノは「世界中でジャベリンの需要が高まっているため、陸軍の顧客と世界中のユーザーをサポートするために生産を拡大する当社の能力は、これまで以上に重要になっています」と述べている。
ジャベリン対戦車ミサイル
ジャベリン対戦車ミサイルは開戦前からロシアの侵攻に備え、ウクライナ軍に供与されていた。そして、いざ侵攻が始まるとジャベリンは迫るロシア軍の戦車、装甲車をことごとく破壊していった。ジャベリンのミサイルの射程は2500mと携行式対戦車兵器としては長く2500m、ロシア戦車の主砲の射程約2000mを上回り戦車のアウトレンジから攻撃を可能にした。またミサイルには赤外線誘導装置が搭載され、発射後は自動追尾、いわゆる撃ちっぱなしの「ファイア・アンド・フォーゲット機能」有するので、射手は発射後直ぐに退避できた。命中率は95%と百発百中と言ってもよく、弾頭は爆発反応装甲にも対応する二段構成のタンデム構成で最大600mmの装甲を貫通、さらに上空に飛翔してから降下して戦車の最も脆弱な砲塔上面を狙って撃つ「トップアタック」という機能も持っており、一撃で戦車をも破壊した。その活躍もあり、各国で需要が急増。アメリカや他のNATO諸国も在庫の多くをウクライナに供与するなど、在庫不足に陥っていた。生産ラインが増強されることで、今後数年間で在庫不足は解消されると思われる。