
米海軍は核弾頭搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「UGM-133 Trident II(トライデントII)」の改良を開発生産元のロッキード・マーティン社に発注。これによりミサイルの寿命は延長され、2084年まで使用可能となる。
米軍需企業のロッキード・マーティン社は1月31日、プレスリリースで米海軍から、国家の海上戦略抑止力の継続を目的とした次世代トライデントII戦略兵器システム(SWS )D5ミサイルの開発に関する既存契約に3億8,300万ドルのコストプラスインセンティブ料金およびコストプラス固定料金の変更の発注を受けた事を発表した。この契約変更により、同社はトライデントII D5寿命延長2(D5LE2) と呼ばれる改良型ミサイルを設計することになる。統合され近代化されるこのミサイルは現在建造中の新型原子力潜水艦「コロンビア級弾道ミサイル潜水艦」に搭載され、2084年まで戦略兵器システムの信頼性が維持されることになる。ロッキード・マーティンの艦隊弾道ミサイル担当副社長ジェリー・マムロール氏は「トライデントD5ミサイルの2度目の寿命延長により、米国と英国はポラリス販売協定を通じて、進化する脅威を抑止する信頼性を維持できるようになります。私たちは、抑止力をこの新しい時代へと導くために、米国海軍との重要なパートナーシップを継続できることを誇りに思います。」と述べた。2030年9 月30日に完了を予定している。
UGM-133 Trident II
トライデントIIミサイル(トライデントD5)はロッキード・マーティン社が海軍向けに開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で1979年に配備が始まった前身の「トライデントI」の改良型として、1990年に配備が始まった。1989年に設計が完了して以降、米海軍は160回を超えるミサイル発射試験を成功させており、世界で最も先進的で信頼できるSLBMだ。2002年にはミサイル部品を交換し、ミサイルの寿命を 30年から44年に延長する寿命延長プロジェクトを開始。今回の第二次寿命延長プロジェクトにより、2084年まで運用可能となる。
スペック
ミサイルの全長は13.42m、直径は2.11m、ペイロードは2800kgで発射時の重量は59,090kg。射程距離は12,000km。弾頭にはポストブースト・ビークル(PBV)が搭載され、最大12個の再突入体(RV)を搭載できるが、新戦略兵器削減条約(新START)ではその数は8個に制限されている。RVには、W76(100kT)の威力を持つ弾頭を搭載したMk4、またはW88(475kT)の威力を持つ弾頭を搭載したMk5のいずれかを搭載する。天文/慣性航法を組み合わせた誘導方法は平均誤差半径(CEP)90mの精度を誇る。
現在、トライデントIIは米海軍のオハイオ級原子力潜水艦、英海軍のヴァンガード級原子力潜水艦に搭載されている。米海軍は現在、18隻あったオハイオ級の内、初期の4隻を巡航ミサイル原潜に改良しており、残りの14隻を戦略ミサイル原潜として運用。この内8~10隻を常時配備しており、各艦には20基のトライデントIIが搭載されている。ヴァンガード級は4隻の内、2隻を常時配備、それぞれ4基が搭載されている。トライデントIIは現在開発・建造中である米海軍のコロンビア級、英海軍のドレッドノート級の両弾道ミサイル潜水艦(SSBM)にも搭載される。コロンビア級の一番艦の就役は2031年を予定。2042年までに計12隻が建造され、2085年まで運用を予定している。今回の改修でトライデントIIの寿命は2084年までになるので、コロンビア級でもトライデントIIを使い続ける事を意味する。