米国防総省は17日金曜日、3月に飛行再開したティルトローター機のV-22オスプレイに新たな飛行制限を発令した。報道によると、V-22オスプレイは適切な着陸地点から30分の飛行圏内に留まるようにすることが義務付けられており、これは、オスプレイを配備する空軍、海兵隊、海軍すべてが影響を受ける。
鹿児島県屋久島沖で2023年11月、アメリカ空軍のV-22オスプレイが墜落。乗員8名が死亡するという悲劇的な事故が起こった。その事故を受け、米国防省は、同年12月から世界中に配備しているすべてのオスプレイの飛行を停止していた。しかし、Military.comの報道によると、飛行停止は今年3月初旬に解除され、徐々に運用を再開していた。そして、それから2か月、米国防省はオスプレイに新たな飛行制限を課した。V-22オスプレイは飛行する場合、適切な着陸地点から30分以内に留まる事を義務付けられた。過酷な条件下でヘリコプターのように迅速に着陸できるように設計されたティルトローター航空機にとって、どのような場所が適切な着陸ゾーンとなるのか、その詳細は不明だ。ある程度のスペースと平坦な陸地であれば離着陸は可能だが、飛行場や基地、ヘリポートなどの整備されたインフラを指しているのかも分かっていない。
この制限は事故を起こした空軍のV-22だけではなく、海兵隊のMV-22、海軍のCMV-22、特殊作戦司令部(SOCOM)用のCV-22と全てのオスプレイに課せされている。オスプレイは垂直離着陸とホバリング、傾斜可変機能を備えたエンジン・ナセルによって直線飛行を可能にしたティルトローター機で、ヘリコプターのように離着陸を選ばない上に、固定翼機に近いスピード、長い航続距離を持ち合わせており、兵員輸送、医療避難、特殊作戦など使用されてきた。しかし、この制限のため、オスプレイの長所を活かした運用はできない。むしろ30分以内の飛行制限はヘリコプターよりも使い勝手が悪くなっており、飛行制限解除された今も、海軍はオスプレイが担っていた任務を別の機体が担っている。
今年2月、国防総省が禁止令を解除する直前、空軍特殊作戦司令部はオスプレイの事故原因について「物質的な損傷は判明しているが、原因はまだ調査中だ。調査にとって極めて重要な損傷の根本原因を突き止めるための技術的テストと分析が進行中だ」との声明を発表しており、今回、飛行制限が課せられたことからまだ、根本的な原因特定と解決に至っていないことが推察される。オスプレイはこれまでエンジンとプロペラローターをつなぐギアボックス内のクラッチエンゲージメントに不具合が多発、これにより2つのエンジンのパワーバランスがとれず、左右の機体バランスが取れず危険な問題につながり、事故が起きる可能性があるとされ、これは部品の摩耗速度が想定よりも早いことが原因と特定。クラッチを内蔵する”インプット・クイル・アセンブリ”の交換のため、2023年2月に全軍で一定の飛行時間を超えた機体の飛行停止、部品交換を行っている。しかし、同年11月に死亡事故が起きてしまった。事故を起こした機体が部品交換を行った物かは分かっていない。
V-22 オスプレイ
V-22 オスプレイはティルトローター方式と呼ばれる回転翼の角度を変更することができるティルトローター機で、2つの回転翼によりヘリコプターと同じ垂直離着陸、ホバリングが可能で、回転翼を前方に傾けることで推進力を生み飛行機のようなスピードを得る事ができる。飛行モードで最高速度520kmに達し、これはUH-60ブラックホークの倍のスピード。運用上限は25,000 フィート(7,620m)。内部燃料供給装置を備えた航続距離は標準1,600km、最大3,600km(ペイロードなし) で、空中給油によりさらに延長することができる。最大32名の人員を一度に輸送できる。