世界の空母保有国は?数と実態は?

世界の空母保有国は?数と実態は?
奥から護衛艦かが(日)、空母カールビンソン(米)、空母クィーンエリザベス(英)US Navy

近年、新空母の建造、就役が相次いでいます。ここ10年間でアメリカ、中国、インド、イギリスといった大国が新造艦を建造、または就役させています。この他、建造中、計画されている空母もいくつかあります。日本も2021年10月、四国沖で海上自衛隊の”いずも型護衛艦”の一番艦である「いずも」の甲板にて初の航空機の離発着訓練が行われ、岩国基地に所属する米海兵隊「第242海兵全天候戦闘攻撃中隊」のF-35 BライトニングII型戦闘機が着艦、発艦に成功。日本は晴れて、第二次大戦以来の航空機の発着艦可能な航空母艦「空母」を手に入れています。現在、空母を保有する国は世界でもごく少数で2024年3月現在、空母保有国は日本を含めたった9か国しかありません。その9か国を紹介します。
※ヘリコプター空母や強襲揚陸艦を空母と分類するところもありますが、本記事では艦載機の離発着が可能な艦船を対象しています。

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アメリカ 20隻

ニミッツ級
https://nationalinterest.org/
ニミッツ級

世界最大の軍事大国であり、世界最強の海軍を擁するアメリカ軍。空母戦力に関しても他国を圧倒しています。空母は全て原子力を動力とした原子力空母で艦載機70機を擁する大型空母。現在の保有数はニミッツ級が10隻、ジェラルド・R・フォード級が1隻の計11隻になります。。ニミッツ級の1番艦は1975年就役になりますが、未だ現役です。最新鋭のジェラルド・R・フォード級は世界で初めて電磁式カタパルトを採用、これにより、艦載機の運用効率が上がっています。2017年に1番艦が就役、二番艦であるジョン・F・ケネディは2024年中の就役を予定、同級は今後10隻の建造を予定しています。また、強襲揚陸艦であるワスプ級とアメリカ級はSTOVL タイプ(短距離離陸・垂直着陸)であるF-35Bを搭載、離発着が可能であり、軽空母といってもよいでしょう。最新のアメリカ級は最大20機のF-35Bが搭載でき、搭載能力は他の国の空母に匹敵します。米海軍はワスプ級を7隻、アメリカ級を2隻所有。アメリカ級は計11隻の建造を予定しています。

 ジェラルド・R・フォード級
ジェラルド・R・フォード級

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中国 3隻

中国海軍の艦艇、現在の340隻から2025年には400隻に!艦艇数は既に世界一

隣国、中国は長らく空母を保有しておりませんでしたが、2012年に中国初の空母「遼寧(りょうねい)」を就役させます。これは旧ソビエト海軍が1985年に起工した空母Varyag(ヴァリャーグ)を改修したもので、同艦はソ連崩壊に伴い、開発が中断、その後ウクライナに編入され、1998年にマカオの企業がウクライナからスクラップとして購入したものを中国海軍が買い取ったものです。それを近代化、電子装備を改修したものになり、2012年に就役と言えど空母の基礎設計は古いものになります。 遼寧で培ったノウハウを基に2隻目として初の国産空母「山東」を建造、2019年に就役しています。遼寧、山東ともに発艦方式にスキージャンプ式を採用いていますが、2022年に進水した三隻目の空母「福建」には最新の電磁カタパルト式の発艦システムを採用するなど近代的な空母になっており、2025年の就役を予定。4隻の空母の建造も始まっており、原子力空母になるのではと噂されています。既に空母艦隊の戦力はアメリカに次ぐ規模になっています。

ウォルターソン 1/700 空母 遼寧 (りょうねい) 完成品

タイ 1隻

空母 チャクリ・ナルエベト

決して軍事大国と言えないタイが空母を保有しているのは意外と思われるかもしれません。タイ海軍は1997年にスペインで建造された「チャクリ・ナルエベト」を就役させています。ただ、周辺に脅威となる国や海域はなく、脅威があるとすれば、それは国内にいる反政府テロになり、国内状況が不安な隣国ミャンマーです。そのためタイの軍事予算は陸軍が優先されます。そのため、海軍の予算は少なく、空母の必要性も無いため、現状、運用可能な艦載機は一機もない状況です。そのため、同艦は空母として運用はされておらず、現在では月1回の訓練や災害派遣、王室の移動に用いられることが主になっており、タイ王室の宿泊施設も備えています。

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艦載機が一機もないタイ軍空母「チャクリ・ナルエベト」

インド 2隻

空母 ヴィクラマーディティヤ
https://ukdefencejournal.org.uk/
ヴィクラマーディティヤ

隣国パキスタン、中国と領有権争いがあり、中国のインド洋進出に神経をとがらすインドは近年、海軍戦力の増強を図っています。イギリス海軍の流れをくむインド海軍は1961年から空母を保有していますが、現在は2隻体制に。2014年に就役した「ヴィクラマーディティヤ」は1978年にロシアで起工されもので、その後、ソ連崩壊や事故など紆余曲折がありインドに引き渡され、近代改修のち起工から40年近く経ってようやく就役にこぎつけます。その後、初の国産空母となる「ヴィクラント」を建造、2022年8月に就役しています。どちらもスキージャンプ式の飛行甲板で、ヴィクラントではフランスの艦載機ラファールMを搭載する予定です。3隻目の空母となる6万5000トン級の「ビシャル」の建造計画も立てています。

ロシア 1隻

空母 アドミラル・クズネツォフ
https://jp.sputniknews.com/
アドミラル・クズネツォフ

アメリカに次ぐ軍事大国のロシア。かつてはアメリカと覇権を争っていましたがソ連崩壊に伴い多くの空母の建造計画がとん挫し、現在は1990年に就役した「アドミラル・クズネツォフ」1隻のみになります。しかし、船体は古く推進システムや装備も旧態以前のものになり、現存する世界最悪の空母といわれています。2017年に近代化改装のためドックに入港しますが、度重なる火災事故で一向に改修は終わらず、2022年12月にもまた火災が発生、復帰は2024年以降を予定していますが、火災が起きるたび延期されています。2016年にシリアに派遣、2017年にロシアに戻ってからはずっとドッグに入ったままです。ウクライナ侵攻の影響もあり、改修は更に遅れると思われます。

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イギリス 2隻

英海軍空母プリンス・オブ・ウェールズは共食い整備で部品どりをされていた
プリンス・オブ・ウェールズ

かつてイギリス海軍は世界最強といわれ、世界初の空母を起工したのはイギリスでした(完成まででいうと日本が初です)。現在は2017年に就役した「クイーン・エリザベス」、姉妹艦となる「プリンス・オブ・ウェールズ」が2020年に就役。共にスキージャンプ方式を採用した空母です。日本とイギリスは防衛協力を結んでおり、 クイーン・エリザベスが2021年は太平洋に派遣され、海上自衛隊との合同演習を実施、横須賀基地に寄港しています。

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フランス 1隻

空母 シャルル・ド・ゴール
https://www.defencetalk.com/
シャルル・ド・ゴール

2001年に就役した「シャルル・ド・ゴール」。フランスはアメリカ以外では唯一、原子力空母を保有しています。艦載機には核攻撃能力を有した国産のマルチロール戦闘機ラファールMを搭載しており、空母を保有する国で空母に核兵器を搭載しているのはフランスのみになります。その為、非核三原則に基づき、日本への寄港は認められていません。シャルル・ド・ゴールは2038年の退役を予定しており、フランスは2020年12月に次世代原子力空母「PANG」の建造を発表しています。

イタリア 2隻

空母 ジュゼッペ・ガリバルディ
https://www.pinterest.jp/
ジュゼッペ・ガリバルディ

イタリアでは現在、1985年就役の「ジュゼッペ・ガリバルディ」、2008年就役の「カヴール」の2隻の空母を保有しています。イタリアが2隻とは意外ですが、どちらも軽空母ほどのサイズになり日本の護衛艦「いずも型」と大きさは同程度になります。ヘリコプターや揚陸艇の搭載など強襲揚陸艦の用途も踏まえた構造になっており、現状は空母としてはほとんど利用されていません。

空母 カヴール
https://www.militarypedia.it/
カヴール

スペイン 1隻

スペイン海軍の強襲揚陸艦フアン・カルロス 1 世は、軽空母としても使用できる多目的艦です。スキージャンプ式の飛行甲板を備えており、垂直/短距離離着陸機のハリアーII戦闘機の発進に必要な設備が装備されています。将来的にはF-35Bの搭載も計画されています。ちなみにオーストラリア海軍が同型艦であるキャンベラ級強襲揚陸艦が就役していますが、こちらは今の所、航空機の運用を予定していません。トルコも同じくアナドルが2023年に就役。トルコは空母搭載可能な航空機を所有しておらず、無人機の搭載を予定しています。

日本 2隻

いずも(出典:防衛省)

日本は第二次大戦以降、憲法9条の専守防衛の原則のもと空母を所有していませでした。安全保障、離島防衛の観点から航空母艦の所有に舵をきります。そこで行われたのが”いずも型”の護衛艦の改修です。同艦は空母のような大きな甲板を持っていますが、ヘリコプターの離発着はできても航空機の離発着を行うことは不可能でした。そこで、飛行甲板の耐熱塗装や誘導灯、標識塗装といった航空機の離発着可能な空母化の改修を行ってきました。そして、先行して改修が行われた一番艦の「いずも」のF-35Bの離発着訓練が2021年10月に洋上にて行われ、無事に成功します。艦載機は短距離滑走離陸/垂直着陸(STVOL)のF-35Bに限られます。二番艦の「かが」も2023年11月に第一次改修を終えています。

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