2016年に日本で公開されたデンマーク発の戦争映画。アフガニスタンに駐留したデンマーク軍を舞台に仲間を守るために下した決断、しかし、その代償で失われた命によって軍事法廷で裁かれることになった部隊長を描く。守るべきものは家族?仲間?正義?第88回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたヒューマンドラマ映画について紹介します。
あらすじ
紛争が続くアフガニスタン、周辺の治安維持とタリバンを叩くために平和維持軍として駐留するデンマーク軍。そんなある日、周囲巡回中の部隊の一人が地雷を踏んで命を落としてしまう。愛する人をおいて祖国を遠く離れ、精神をすり減らして隊員の中にはこれをきっかけにパニックなる兵士もいた。駐留軍の部隊長であるクラウスは自ら巡回に参加することで部隊の士気を上げ、兵士の負担を軽減する。しかし、そのクラウスも祖国に妻マリアと三人の幼い子供を残していた。
ある日、巡回中に村を訪ねると怪我した娘を助けてほしい地元民にお願いされる。娘を治療した上でクラウスは父親に「困った事があればなんでも言ってくれ」と伝える。すると数日後、父親が家族を連れて基地に訪れる。「タリバンが来て脅迫される。協力しない殺されるので助けてほしい」という内容だった。彼らは戻ると殺されるから基地に居させて欲しいとお願いするも、クラウスは明日村に行くから今日は帰るように説得する。翌日、約束通りに村に行き家族の家に行くと子供含め全員が惨殺されクラウスたちは落胆する。
そんな折、クラウスたち部隊は待ち伏せていたタリバンの襲撃を受けてしまう。一人の兵士が首に銃弾を受け瀕死におちいる。すぐに救援ヘリを呼ばなくては助からない。しかし、タリバンの攻撃は続いており、ヘリを安全に着陸させる場所の確保はできない。しかもタリバン兵の位置も分からず、航空支援を願うにも敵を視認できていなかった。攻撃は続き、このままでは仲間も死に全滅もあり得る。苦境の中でクラウスは西の第6地区から攻撃を受けていると推測し、確認もせずに敵を見たと通信兵に嘘をつかせ爆撃を要請する。爆撃後は攻撃は止み、負傷兵も命を取り留めた。
しかし、数日後に基地に法務官がやってくる。理由はクラウスの軍規違反の捜査だった。先日の襲撃事件で命じた空爆の結果、子供を含む11人の罪無き民間人の命が失われていたのだ。この罪に問われたクラウスは、軍事法廷にかけられるためデンマークに帰国させられる。
帰国したクラウスは家族と再会し、しばし、安息の時間が訪れるも軍事法廷が開かれる。せっかく家族の元に帰ってきたクラウスだが有罪となれば最長4年の禁固刑になる。仲間を守るために取った行動の結果、家族と離れるかもしれないことに。法廷に立つクラウスは家族と正義、どちらをとるのか?部下たちは何を証言するのか ?
その判決は……
戦闘・アクション: 2
作品名 | ある戦争 |
原題 | 英語:A WAR デンマーク語: Krigen |
公開日 | 2016年10月 |
監督 | トビアス・リンホルム |
ストーリー レビュー
前半がアフガニスタンでの駐留任務を描いており、後半が家族との時間や軍事法廷のやりとりになる。戦争映画にはなるが、見どころは後半の法廷でのやり取りになる。検察側はクラウスに容赦ない追及する。戦場での一部始終はボディカメラにも収められており、反論の余地は少なかった。仲間を救うため、あの状況では止むを得なかった判断ではあったが、子供を殺してしまったことに彼は罪を感じていた。中東情勢を伝えるニュースなどで民間人への誤爆などたまに見ることがあると思う。私たちはそれを聞き流すだけだったり、罪なき民間人が可哀そうと思うかもしれない。しかし、またその裏側には誤爆をしてしまい苦悩する人たいがいる。正直、劇中に出てくる家族の言動や隊員たちの証言は褒められたものではないが、家族にとってみれば国のために戦った夫が服役するのは納得いかないだろうし、隊員も仲間のために取った行動を批判したくはないという気持ちも分かる。戦争というのは何が正義で、誰のためなのか分からなくなる。
戦闘・アクション レビュー
戦闘シーンは少なく、派手さはない。戦闘シーンはあまり期待しないでください。しかし、タリバンに襲撃されるシーンは緊迫感があり、窮地に陥っている状況が目に取れます。また、軍人たちの立ち振る舞いもリアルそのもの、なぜなら、メインキャスト以外は実際にアフガニスタンに従軍したことのあるデンマーク軍の兵士だからです。なので、デンマーク軍の現地での装備もリアルに再現されている。彼らが持っている銃はM16のように見えるが、M16のライセンス生産になるコルト・カナダGV M/10になる。照準器はELCAN社製C79が標準装備として装着されている。