ペリリュー島という島をご存知ですか?太平洋戦争の激戦地の一つとなった、太平洋パラオ諸島の島の1つです。このペリリュー島の戦いを描いた1つの漫画があります。ヤングアニマルコミックス(白泉社)で2016年7月から連載されている『ペリリュー 楽園のゲルニカ』という作品です。2020年5月時点で8巻まで創刊されています。こちらの作品の紹介をさせて頂きます。
作品概要・あらすじ
この作品は史実をベースにしたフィクションになります。 田丸という一等兵を主人公に描かれており、ペリリューでの戦いの日々を、一等兵の目線から描いた作品です。
”昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか──!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録! ”
※白泉社 https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/42935/
作品名 | ペリリュー 楽園のゲルニカ |
著者名 | 武田一義 / 平塚柾緒(太平洋戦争研究会) |
出版社 | 白泉社 |
作者 | 武田 一義 |
コミック数 | 6巻 ※連載中 |
ペリリュー島の戦いとは
太平洋戦争末期の1944年(昭和19年)9月15日から11月27日にかけてペリリュー島(現在のパラオ共和国)で行われた、日本軍とアメリカ軍の大規模戦闘である。当時の日本軍は無謀な突撃攻撃で大きな損害を出す事が多かったが、ペリリュー島では洞窟陣地を構築し、ゲリラ戦法を用いた。戦力差は日本の1万名に対しアメリカは5万名だったが、日本軍が見せた組織的な抵抗戦術はアメリカ軍を苦しめ、4日で終わると目された戦闘は約3か月続いた(これらの戦法は後の硫黄島の戦いへと引き継がれていくことになる)。生き残った兵は僅か236名だった。
感想
主人公は田丸という徴兵されたただの一兵卒になり、漫画家志望で、戦場でも漫画の事は忘れません。この田丸がまた頼りなく弱々しいのですが、それが逆に読み手に共感を与えています。読み手である私たちは戦場を知りません。また田丸自身も好戦的ではなく一方引いた形で客観的に戦場を見ているのです。なので読み手である私たちは俯瞰的に戦場見ることできることができます。
また、特徴的なのは絵の描写です。史実をベースにした戦争漫画は『はだしのゲン』のように描写が凄惨であったり、『特攻の島』のように重くシリアスなものが多く、一般の人には中々とっつきにくいと思います。そういいった中で、この作品の一番の特徴が牧歌的というか戦争漫画とは思えない和かい絵のタッチにあると思います。登場人物は三等身でコミカルで、戦争という題材でありながら、読者にあまり悲壮感を与えない表現になっています。史実を基にしていることもあり、爆発で兵士がバラバラになったり、死体が腐敗して蛆がわくなどというシーンもあり、内容は過酷な戦場をしっかり描いているのですが、このような絵のタッチもあり、凄惨な場面でも目を背けることなく読むことができます。これがリアルな描写であれば苦手な人は途中で読むのを止めてしまうでしょう。
実は作者自身、2015年の天皇皇后両陛下のペリリュー島訪問というニュースを見るまで、ペリリュー島 の戦いを知らなかったそうです。ニュースで知ることになり、それから、関連する資料を読みあさり、生還者の話を聞いていったそうです。そうやって、自分が知ることになったこの戦争の過程を描くことによって多くの人に同じように知ってほしいマンガに描いたそうです。
『ペリリュー 楽園のゲルニカ』 は戦争漫画に一石を投じた作品かと思います。ペリリュー島であった現実をこの作品を通してぜひ、皆さんも知ってください。
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ペリリュー島の戦いの史実を実写化したドラマ『ザ・パシフィック』という作品があります。アメリカ軍の視点になりますが、この作品からも日米にとっていかに過酷な戦場であったのかが分かります。