お酒で戦争に勝ったと聞くと飲めば飲むほど強くなる「酔拳?」かと思ってしますが、1904年に始まった日露戦争ではすでに重火器を使用した戦闘がメインの時代です。そもそも、日露戦争の命運が喫したのは歴史でも習う日本海海戦にて東郷平八郎率いる連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に圧勝した結果です。ただでさえ揺れる艦上で酒を飲みながら戦うなんて無理ですよね。そもそも泥酔して戦闘に臨むなんて、軍規違反の銃殺もありえそうです。
(※海上自衛隊では航海中の飲酒は米軍の規範に合わせ原則禁止になっています。)
では、お酒は勝利にどういった影響を与えたんでしょうか。
日本人が酒を飲むようになったのは軍隊のせい
日本人が一般的に酒を飲むようになったのは意外にも遅く、江戸時代から明治にかけての1800年代になります。それまでは大名や武士といった位が高い者の趣向品で一般人はあまり口にするようなことはありませんでした。日本人一般男性が飲酒を常態化するに至ったのは徴兵で軍隊に入隊してからです。1873年に徴兵制度がしかれて以降、多くの男性が軍に入隊します。
「軍隊での厳しい訓練も酒を飲むことで乗り越えて強くなったとか?」
と思った方、違います。
酒を覚えた男性たち
一度、お酒を覚えると飲酒が常態化しちゃう人は多いと思います。
兵役を終えた後も一度覚えたお酒はそうそうやめられず、男たちは外や自宅での飲酒が常態化して、結果、国内の飲酒量が増えていきます。明治初期の1870年代頃には酒類が日本で一番生産量が多い商工業品でした。そこに目を付けた明治政府は、1896年に酒造税法が施行します。
日清戦争の開戦
1894年(~1895)に清国(現 中国)との戦争がはじまります。戦争には莫大な金がかかります。日清戦争での戦費は、2億3千万円(現在の価値に換算して約2兆3千億円)になります。前年度の国家歳出の約3倍です。戦争による歳出が国家予算に重くのしかかって来ます。しかし、日清戦争に勝利した日本は政府は賠償金と還付補償金として、清国から3億6千万円を受け取っており、賠償金にて戦費を賄いました。
日露戦争の開戦
しかし、日清戦争終了もつかの間、10年も経ないなか1904年(~1905)にはロシアとの日露戦争が開戦します。日露戦争での戦費見積は4億5千万円になり、日清戦争の倍でした。そうなると戦費が大幅に不足することになります。お金が無ければ弾薬や兵器は買えず、兵に補給もできません。そこで政府は戦費調達のために酒税を大幅に上げます。それまで、当時の税収は土地に課せられる地税が9割を占めていました。それが日露戦争の明治時代後半に地税を超え酒税が国税の42%を占めるほどになります。ちなみに平成27年度の税収に占める酒税の割合は1.4%です。いかに当時の税収が酒に頼っていたかおわかりでしょう。
国民がたくさんお酒を飲むことによって、酒税が納められ、戦費が調達でき、日露戦争で勝利を収めることができたんです。
昔なら、酒を呑む口実が「国のためだ!」なんて言えたかもしれませんが、今では全く通じませんね。お酒を飲んでも強くなりませんから、お酒はほどほどに。