エアボーン(空挺)とヘリボーン(空襲)

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エアボーン(空挺)とヘリボーン(空襲)
出典:第一空挺師団

兵士が空から潜入、降下する方法には2つある。航空機からパラシュートで降下する「エアボーン」とヘリコプターからロープなどをつたって降下する「ヘリボーン」だ。

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エアボーンとは

エアボーン(空挺)とヘリボーン(空襲)
photo by us army

エアボーン、日本語では「空挺」といわれる降下方法になる。兵士は航空機に搭乗し、高度300~400mを高速で飛行する機体からパラシュート(落下傘)、またはグライダーと呼ばれる滑空機を使って降下する。エアボーン降下は全ての兵士ができるわけではなく、専門の訓練を受けて空挺資格を得ることが必要になる。資格を得た兵は空挺隊員、落下傘兵、降下猟兵などと呼ばれる。

敵の背後を突くことが目的

空挺隊員・空挺部隊が誕生したのは第二次世界大戦からになる。各国は広域の戦場にいち早く兵士を展開させる方法として航空機による兵士の輸送を検討する。しかし、敵地、戦場に着陸するわけにはいかないので、着陸させずにパラシュートを使って降下させる方法を思いつく。これを最初に作戦に取り入れたのはナチス・ドイツになる。前線を飛び越え敵陣深くを急襲する戦術は当時のドイツ軍の電撃戦の要でもあった。空挺部隊は空という利を活かし、前線を飛び越え、敵の背後や中枢を叩くことを求められる。ノルマンディー上陸作戦での米軍の空挺部隊は作戦前夜に敵陣地に降下して、ドイツ軍をかく乱、浜辺と内陸からドイツ軍を挟撃し、作戦を成功させた。このように作戦が成功すればいいが、失敗すれば、敵に包囲され、補給も受けられない事態になる。そのため空挺隊員は一般歩兵と比べて体力やゲリラ戦に長けており、エリート兵士とされている。

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HALOジャンプ

作戦規模が大きく目立つエアボーンが現在のテロ戦争に使用されることはほとんどないが、高高度降下と呼ばれるHALOジャンプ(高高度降下低高度開傘)が特殊部隊の間で使われている。10,000mという高高度から降下するため航空機の存在が地上から気づかれにくい。降下した隊員はパラシュートを目にされることを極力少なくするため300mという低高度でパラシュートを開く。主に潜入や隠密作戦に使われ、より目立たないように夜間に行われることが多い。

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ヘリボーンとは

エアボーン(空挺)とヘリボーン(空襲)
photo by us army

ヘリボーンはAir Assault(エアアサルト)とも呼ばれ、日本語にすると「ヘリ降下」「空襲」と呼ばれる降下方法になる。兵士はヘリコプターに搭乗し、着陸したヘリから降下する”Air Insertion(エアインサーション)”、または低高度でホバリングするヘリからロープを使って降下するリペリング、またはファストロープロープという方法がある。前者の場合は特に訓練は必要ないが、後者は訓練が必要になる。しかし、空挺のような資格が必要というわけではない。
ヘリボーンで降ろすのは兵士だけではなく、野砲や車両をヘリに吊り下げて戦地に降ろすこともある。これを”Sling Load operations(スリングロードオペレーション)”という。これの取り付け、荷ほどきには資格が必要になる。

ベトナム戦争からヘリボーンが主流

ヘリコプターが誕生したのは大戦後になり、本格的に戦場に投入されたのは1960年のベトナム戦争からになる。ジャングルの多いベトナムではパラシュートで降下するエアボーンは不適合だった。また、エアボーンは航空機、兵士の準備に時間がかかる。ジャングルに潜み、機動力が高い北ベトナム兵を発見してから準備していては到底間に合わない。その点、ヘリは直ぐにでも旅立つことができ、搭乗する兵士は特に準備する物もない。ヘリは滑走路が不要で場所を選ばず兵士を降下させることができる。当時、主力であったUH-1ヘリは最大10名ほどしか搭乗することはできなかったが数百機のヘリを使って数千人を即座に戦場に送りこむことができた。

神出鬼没で機動性が高いテロリスト対策においてもヘリボーンは有効であり、現在の対テロ戦争における空中降下はヘリボーンが主流になっている。

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