バルト三国、対人地雷禁止を定めたオタワ条約からの離脱を検討

バルト三国、対人地雷禁止を定めたオタワ条約からの離脱を検討

ロシアと陸地で接するバルト三国はロシアとの国境線に防衛網を構築するため、対人地雷禁止を定めたオタワ条約からの離脱を検討しているとワシントンポストが報じた。リトアニア、エストニア、ラトビアの三か国は今年に入ってから対人地雷使用の是非について議論している。

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ウクライナの苦戦が報じられる中、ウクライナと同様、ロシアと陸で接するリトアニア、エストニア、ラトビアのバルト三国は危機感を強めており、最近、ロシアとの国境沿いに強力な防衛線を共同で構築することに合意している。エストニア議会の代表者らは、ロシアとの国境600カ所にコンクリート掩蔽壕による防衛線を構築することを決定。エストニア議会防衛委員会のレオ・クナス副委員長は、物理的な抑止力として国境近くに地雷原を設置した要塞を築くべきだと主張している。そのためには対人地雷を禁止する1997年のオタワ条約から脱退する必要があり、離脱の可能性についての議論を開始している。ラトビアも対人地雷使用の議論を開始したが、今のところはオタワ条約から離脱する正当性はないと述べている。その理由として軍隊は歩兵や重武装部隊を阻止するために他の効果的な機動阻止手段を導入しており、今後も導入する予定であると述べており、離脱する事によるデメリットの方が大きいと判断している。ただ、これは対人地雷の使用を完全に排除するものではない。リトアニアの同行は今のところ不明だ。しかし、隣接する三か国、対人地雷の使用の是非を決める上では足並みを揃える必要がある。防衛線の強度に差があれば、弱いところを突いてくるの定石だ。これまでのところ、条約を脱退する意思を示している国はない。地雷に関しては機甲部隊の侵攻を阻止する対戦車地雷への投資を続けている。対戦車地雷に関してはロシア、ウクライナ共に苦しんでおり、特に防衛側にとっては有効な手段であることが再認識されている。

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バルト三国は共に小国だ。三国合わせても人口は600万人ほど。ロシアの侵略を受ければ一溜まりもないかもしれない。ただ、ウクライナと違うのがバルト三国はNATO加盟国である事。NATO加盟国の内、一国でも武力攻撃を受ければ、加盟国全体への攻撃とみなし、国連憲章の認める個別的又は集団的自衛権を行使して応戦する義務がある。しかし、一部の政治家たちはウクライナの経験により、ロシアの侵略の可能性を自力で阻止する必要性が高まっていると述べている。支援はあっても即応性は保証できず、初期防衛は最低限、単独で行う必要がある。また、アメリカでトランプ前大統領が当選した場合、アメリカの支援を受けれるかは不透明だ。トランプ氏は「防衛費を相応に負担しないNATO加盟国は守らない」と度々発言している。

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オタワ条約

対人地雷は意図しない形で民間人を無差別に殺傷するものであり、埋められた地雷は永続的に負の遺産として残り紛争が終わった後も地域に住む人を苦しませている。このような悲劇を繰り返さないために1997年にカナダのオタワで「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」が採択された。日本も参加する条約になり、現在162か国が参加している。しかし、この条約、アメリカやロシア、中国、インドといった軍事大国は参加していない。ただ、アメリカについては2014年、オバマ大統領が米軍において「対人地雷を使用せず」という方針を決定し対人地雷の使用は禁止された。ただ、条約には加盟しておらず、朝鮮半島の有事をふまえ韓国、北朝鮮の軍事境界線については例外としている。ロシアは非加盟なため、ウクライナでも対人地雷を使用。それに対し、ウクライナは条約の批准国であり、不均衡が生じている。ちなみに対人地雷でもリモートで起爆させるものは使用可能で、クレイモアなどがそれに該当する。

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