第二次大戦中にヨーロッパで抵抗するレジスタンスのためにアメリカが開発した拳銃がある。「解放者」意味する”Liberator(リベレーター)”と名付けられた「FP-45リベレーター」だ。この銃たった2ドルのコストで大量生産され、レジスタンスに届けられたのだが、安かろう悪かろうでほとんど使用されることが無かった珍銃として有名だ。FP-45リベレーターについて紹介する。
空中投下して大量にばら撒く
時は第二次世界大戦最中の1942年のヨーロッパ、ナチス・ドイツに占領されたヨーロッパ諸国では勇敢な者たちが集まりレジスタンスとしてナチスに抵抗していた。しかし、占領下にある地域においては満足に武器が手に入らなく、効果的な抵抗ができなかった。そこでアメリカは空輸による空中投下でドイツ軍の背後に銃を届けることを計画。数十、数百では効果が無いと考え、100万挺レベルの銃の供給を考える。例えドイツが発見したとしても、これなら全てを押収することは無理であり、それだけの銃器がレジスタンスに出回っていると分かればドイツ軍は混乱し、兵士はレジスタンスを恐れると考えた。
余計な機能は排除
しかし、時は大戦時、兵器製造ラインはどこもいっぱいであり、主力兵器の生産ラインに影響を及ぼさせずに生産する必要があった。また、紛失、押収されるリスクも考えるとコストはかけにくい。大量生産が容易で、早急に用意する必要もあった。そこで、最小レベルの大きさにプレス加工の鋼フレーム、バレル内にはライフリングは刻まれていなく、マガジンや排莢システムといった銃には当たり前の機能を排除、非常にシンプルな設計が採用される。ジェネラルモーターズの工場によって生産され、1日あたり約13,000挺、僅か11週間で100万挺もの数を生産した。生産コストは当時の価格で1挺あたり2.1ドルといわれており、現在の価値にして約16ドル(約1700円)と超低価格だ。
この銃は”Flare Projector Caliber .45”を意味するFP-45と名付けらる。45は45口径の意味。Flare(フレア)は信号弾拳銃を意味するが、これは敵を惑わすために付けれた。
性能
しかし、そんな低価格なFP-45の性能は安かろう悪かろうだった。
全長は141mm、バレル長は100mm、重量は500gと超コンパクト、超軽量。銃弾は拳銃弾としては強力な.45ACP弾を使用する。問題はここから。弾丸は1挺あたり、10発がグリップに収納されていたが、装填、発射はあくまで一発ずつ。一発撃ったら、銃口から棒を突っ込んで薬莢を排莢、そして次弾を装填と連射性は著しく悪い。そして、もっとも致命的なのは、その精度だ。ライフリングが無いため、著しく精度が悪い。射程は僅か15m、狙って撃てるのは3mと近接格闘の距離。次弾の装填を考えると初弾を外せば終わりだ。むしろ、コンシールドキャリー銃として、武器を持っていないと思わせ、油断したドイツ兵を至近距離から狙う武器ではとも言われた。
レジスタンスに配布されたのはごく僅か
そんな性能のFP-45の評判は悪く、結局レジスタンスに使用されることはなく多くが放棄された。結局投下されたのは100万挺のうち僅か25,000挺のみ。残った大量のFP-45は倉庫のスペースを占有。このままではスクラップにされると考えた軍は45万挺の在庫を戦略諜報局(OSS ※現在のCIA)に提供する。OSSはその後、FP-45をギリシャや中国、フィリピンの届けたとされ、フィリピンで最も使用されたされている。だが、意図した形で配布されたのは極僅かとされ、終戦後、米軍は銃を回収、大量の在庫ともども1947年8月に全て廃棄しており、大量に製造されたながら残っているのは極僅かでマニアの間ではプレミア化している。