イランのミサイルの9割を迎撃したイスラエルのアロー弾道ミサイル迎撃システム

イランのミサイルの9割を迎撃したイスラエルのアロー弾道ミサイル迎撃システム
IDF

4月14日日曜、イランはイスラエルに対して多数のミサイル攻撃を実施しました。しかし、そのほとんどはイスラエルの弾道ミサイル迎撃システム「Arrow(アロー)」によって迎撃されたとされます。

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イスラエル軍は日曜、イランがイスラエルに向けて300発以上の無人機とミサイルを発射したと発表しました。軍報道官のダニエル・ハガリ少将はテレビ声明で、この攻撃には無人機170機と巡航ミサイル30発、弾道ミサイル110発が含まれていたことを発表しています。しかし、イスラエル側の発表によれば、そのほとんどをイスラエルの領空に達する前に撃墜したと述べています。それらを撃墜したのはイスラエル空軍のF-15IやF-35といった戦闘機。そして、最も脅威となる弾道ミサイルを撃墜したのが地上に配備された弾道ミサイル迎撃システム「Arrow」です。

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弾道ミサイル迎撃システムArrow

アローミサイル防衛システムはヘブライ語で「Hetz(ヘッツ)」と呼ばれる、イスラエルの多層ミサイル防衛システムの一つです。イランのミサイル脅威を念頭にアメリカの軍事・資金支援のもと、イスラエルの軍需企業IAIによって1990年代に開発され、2000年から配備が始まりました。弾道ミサイルの迎撃を念頭に置いており、その迎撃高度は地球の大気圏を超えており、イスラエルにとって最も重要かつ困難なミサイル防衛層となっています。Arrow システムには現在 アロー2とアロー3の2つのモデルが運用中で、アロー2は二段式の固体燃料ロケットモーターで最大速度はマッハ9、弾道ミサイルを高度10-50kmの大気圏内で迎撃します。アロー3は更に迎撃高度が伸び、大気圏外で迎撃します。

飛来する弾道ミサイルはエルタ社のEL/M-2080「グリーン・パイン」フェーズド・アレイ早期警戒レーダーが検知、追跡します。最大約500kmの範囲で目標を検出でき、3,000m/sを超える速度で30個以上の目標を追跡、レーダーは目標を捕捉し、アローミサイルを誘導します。現在、3基のアローが配備中で、1基あたり半径100kmをカバーする計算で配置されており、これはイスラエル全土をカバーする広さです。

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アローミサイルが初の実戦を経験をしたのが2017年3月になり、イスラエルの航空機に向けて発射されたシリアのS-200防空ミサイルを撃墜し、初の作戦迎撃を記録しています。また、現在進行中のイエメンの武装組織フーシ派との紛争においても、イエメンから発射される中距離弾道ミサイル「ガドル-110」の迎撃に成功し、初の弾道ミサイルの迎撃に成功します。そして、今回、アローは実戦で多数飛来する弾道ミサイルを迎撃するという実戦経験を積み、戦果を残しました。今回、イランが使用した弾道ミサイルはエマド中距離弾道ミサイルとされています。イラン側の発表ではエマドの最大射程は1700km、最大高度は400kmに達し、最大500kgの弾頭を搭載、イスラエルの防空網を突破できるよう、インパクトの瞬間まで軌道操作が可能で平均誤差半径は10mです。

今回、イスラエルに放たれた110発の弾道ミサイルの全てがエマドかはわかりませんが、全弾を撃墜とはならず、数発が防空網を搔い潜り、着弾しています。イスラエルは今回、飛来した300発の内、99%を撃墜したと発表していますが、アローの撃墜率は不明です。

アローは弾道ミサイルの迎撃においてはアメリカのパトリオットミサイルよりも性能が高いと言われています。2023年6月にはドイツがアロー3の購入を決定。2025年から配備される予定です。日本でも過去に購入の検討に上がっていました。

ちなみにイスラエルの防空ミサイルシステムというと「アイアンドーム」を思い浮かべる人が多いと思いますが、アイアンドームはイスラエルの防空ミサイルシステムの中でも最終防衛網であり、パレスチナやレバノンなどの直ぐそこから、僅か数十秒、低空で飛来してくるロケット弾や無人機の迎撃を主な目的にしており、また、人口密集地帯や需要拠点の防衛など局所的な防空ミサイルシステムです。

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