ロシアのプーチン大統領は24日、ロシア軍の予備役の年齢上限を5歳引き上げる法令に署名した。これにより、階級によっては最大70歳まで年齢上限が引き上げられた。
引き上げられた予備役の年齢上限は兵卒、下士官や准尉、士官候補生など退役時の階級によって異なる。一番下のカテゴリーの年齢上限はこれまでの35歳から40歳に、第二カテゴリーは45歳から50歳に、第三カテゴリーは50~55歳に。将校だった者も細かく分かれており、少尉、中尉、大尉といった尉官は60歳、少佐、中佐、大佐といった佐官は65歳、それ以上の将軍といった上級将校は最大70歳まで引き上げられた。
この法令は2024年から2028年までを「移行期間」と規定している。例えば、2024年に50歳になる第三カテゴリーの元ロシア兵は51歳まで予備役となる。2025年に50歳になる人は52歳までなる計算で、2028年に50歳になる者から、満55歳まで引き上げられる。また、今回の新法では、52歳未満の外国人がロシア国防省と契約を結ぶことができると規定している。
年齢上限の撤廃も
軍隊の年齢制限の引き上げは今に始まった事ではない。ウクライナ侵攻前、ロシア軍への入隊の年齢制限は18~40歳に定められていたが、2022年5月に年齢上限を撤廃する法案を可決し、18歳以上であれば、入隊が可能に。事実上、志願兵への門戸を成人全国民に広げた。更に今年1月には、徴兵の年齢制限の引き上げにも着手。これまでは18~27歳のロシア国民男性が対象だったが、上限を30歳まで引き上げた。
これらの年齢制限の撤廃、及び、引き上げは兵不足によるものだ。ウクライナ国防省の発表によれば、昨年2022年2月24日の侵攻開始から、今年7月24日までのロシア軍の死者は24万人に上る。ウクライナ国防省の発表なので多少盛っている可能性はあるが、少なくともその半数の死者はいると推測される。負傷者は死者の約3倍と言われている。
ロシア軍はウクライナへの侵攻時、国境周囲に最大20万人近い兵員を動員していた。昨年9月には30万人の予備役を徴集し、既にほぼ全員をウクライナに送った。ロシア軍勢力にはこの他、5万人規模の民間軍事会社PMCワグネル、数万人のチェチェン共和国のカディロフツィ、その他、ルガンスクやドンパスといったウクライナ東部の親露派武装組織もいるが、それでも死傷者が多く兵士が不足している。
ショイグ国防相は今年1月に今後3年以内にロシア軍の兵力を150万人まで引き上げる目標を発表。約半数を契約軍人で占める計画だ。そのため、新兵募集活動に力を入れており、新兵の給与待遇を世界最高レベルまで引き上げた。その結果か、6月までに5万の志願兵が集まったと報告。徴兵も含めて11.4万人の新兵を集めた。ショイグ国防相によると、毎日1000人が契約書に署名しているという。また、新たに40万人規模の追加の動員を予定しているとも言われる。そうなれば「国民総動員」とも言っていいかもしれない。老後を悠々自適に過ごす予定だった将軍クラスの元ロシア兵は、生涯軍人として終わりを迎えるのかもしれない。
Source