ロシアの新しい兵器「STAR Warrior(スターウォリア)」は地球低軌道上の宇宙空間にある人工衛星を破壊することができ、米国を始めとしたNATOや西側は位置情報、弾道ミサイルシステムなどが無効化されることを懸念しています。
人工衛星の迎撃に成功
ロシアは11月15日に自国の人工衛星をミサイルで破壊する実験を行い成功としたと発表しました。この実験に対し米国は「無謀で無責任な行動」と非難。爆破破壊したことで、地球軌道上を漂う宇宙ゴミ「スペースデブリ」が1500個以上も発生しました。ゴミといっても衛星やミサイルに使用された固い金属片です。これが弾丸よりも早い秒速7~8kmの速度で地球軌道上を周回するため、同軌道上にある他国の人工衛星や飛行士が滞在する宇宙ステーション(ISS)に損害を与える可能性があり、更に損害を受けた衛星が軌道上から外れ地球に落下する可能性があります。今のところ、明るみになるような大きな被害ありませんが、過去も破壊された衛星の破片が数年後に他の衛星を破損させる事故が起きており、破片が宇宙空間を漂う限り、衛星が破壊されるリスクは続きます。
人工衛星を破壊して、位置情報などを無効化
今回のロシアの人口衛星の破壊はスペースデブリよりも、地上から発射したミサイルが宇宙空間にある人工衛星の破壊に成功したことが安全保障上、大きな懸念を抱かせました。今回は実験のため、ロシアは自国の衛星を破壊しましたが、本来の目的は敵対国の衛星を破壊し、通信、位置情報、弾道ミサイルといったミサイルシステムを麻痺、無効化することを目的とした兵器はなのは明らかです。
この兵器は 「STAR Warrior(スターウォリア)」 と呼ばれています。弾道ミサイル迎撃ミサイルシステム「A-235 PL-19 Nudol (ヌードル)」をベースにしており、2段ロケットを使い、マッハ12まで加速、最大高度800kmにある人工衛星を破壊できます。高度800kmは低軌道と言われる地帯で、打ち上げコストが低コストで済むことから、民間の衛星をはじめとして多くの通信衛星や測位用衛星が周回しています。通信衛星が破壊されれば衛星を介した通信が不可能なり、情報共有に支障をきたします。測位用衛星は主にGPSなど位置情報に用いられる衛星です。現在の軍事行動においてGPSは重要であり、部隊の位置を即座に把握。また、砲弾や誘導弾、ミサイルといった遠距離からの攻撃にはGPS誘導が多く用いられています。GPSが機能しなくとなるとこれらの照準もままならなくなり、精密攻撃が不可能になります。
ロシアは過去、2014~2020年にかけて9回の衛星の迎撃実験を行っていますが、今回、公表したことは実用化レベルに至ったことを示しています。ロシアの国営テレビではこのミサイルがNATOの軍事作戦に不可欠なGPS衛星32個を迎撃できると豪語し、案に警告を行っています。
衛星を破壊しているのはロシアだけではない
今回、ロシアを非難したアメリカですが、アメリカが最初に人工衛星の破壊を行っており、1985年に成功させています。しかし、これにより前述のスペースデブリの危険が明るみになり、計画はキャンセルされています。しかし、ロシアは継続し、更に中国が2007年に衛星の破壊に成功。その後も何度か実験を重ねているようです。2019年にはインドが衛星の破壊に成功しています。アメリカは衛星攻撃兵器を放棄しましたが、現在、ロシア、中国、インドの3カ国が衛星破壊兵器の開発を行っています。
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