ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告によると、ロシアの2019~2023年の5年間の武器輸出は、ウクライナへの全面侵攻とそれに伴う世界的な制裁の影響で大幅に減少し、世界2位の武器輸出国から脱落した。
ストックホルム国際平和研究所が発表した世界武器販売報告書によると、ロシアの2023年の武器輸出量は2014~18年の5年間と比較して2019~23年の5年間で53%減少、約半減した。2019年、ロシアから武器を購入した国は31か国あったが、2023年にロシア製兵器を受け取ったのは12カ国のみだ。その主な要因は言わずもがな、2022年2月にロシアが始めたウクライナ侵攻だ。侵攻による西側からの経済制裁で武器生産に必要な高度な電子機器やパーツの入手が難しくなり、兵器生産が停滞、納期が遅れた。2019年から2023年にかけてロシア製兵器の最大の受領国はインド、中国、エジプトの3か国だが、西側のとの関係も重視するインドやエジプトはロシア製兵器の購入をキャンセルしたり、新規の契約を中止するなど規模を縮小、中国も国内生産の比率を大幅に高めた影響が響き武器取引が大幅に減少した。この間、ロシアのインドへの武器輸出は34%減少し、中国への輸出は39%減少、エジプトへの輸出は54%減少した。 2014年から2018年にかけてロシアにとって第3位と第4位の輸出国であったアルジェリアとベトナムは、それぞれ輸出が83%、91%減少したとSIPRIは報告している。2022年も同様の比較で、武器輸出は31%減少していたが、それでもアメリカに次ぐ、世界2位の武器輸出大国という地位は守っていたが、その座からも脱落した。
戦争は長期化、ウクライナでの自軍の損害が大きく、現在、国内の兵器工場はフル稼働でロシア軍のための車両の製造にあたっており、国外向けの車両を生産する余裕はない。輸出用に製造してたT-90戦車の輸出モデルT-90Sもウクライナに投入していることを認めている。ヘリに関してもエンジンが足りないとされ、かつてエジプトに販売したMi-8/17汎用ヘリのエンジンを買い戻したと報道されており、ミャンマーやベネズエラからパーツなどを買い戻しているという報告もある。インドに納入予定であったS-400防空ミサイルは何度も納入が遅延。輸出用の第5世代ステルス戦闘機として2021年7月に発表されたSu-75チェックメイトの開発も頓挫している。
また、ウクライナとの戦争の終わりが見えないこと、ロシア製兵器がことごとく破壊される映像が拡散したことで、ロシア製兵器の評価はガタ落ちしており、今後の新規契約の先行きは暗く、今年の武器輸出は更に減少すると思われる。
フランスが2位に
ロシアは数十年に渡ってアメリカに次ぐ世界2位の武器輸出大国と地位を維持していたが、とうとう、この座からも後退。代わりに2位に上がったのが3位だったフランスだ。フランスは同じ比較で逆に武器輸出を47%増加。2019年から2023年にかけて、フランスはロシアをはるかに上回る世界64カ国に主要な兵器を供給し、この5年間の武器輸出市場のシェアを7.2%から11%に大幅に伸ばした。ロシアは逆に21%から約11%に半減している。
特に売れているのが同国の軍需企業ダッソー社が開発するラファール戦闘機で、エジプト、カタール、インドネシアといった国から新規契約を獲得、現在、生産能力を超える受注を受けている。これまでロシアのお得意様であったインドはフランス製兵器に鞍替えしており、特に航空機は空軍だけでなく、海軍の艦載機でもラファールMの採用を決めた。また、スコルペヌ型通常動力潜水艦3隻の購入も決定しており、インド軍における海外製兵器のフランス製の割合は4割に迫っている。ウクライナに供与した装輪式の155mm自走榴弾砲カエサルは実戦での評価を高め、注文が増えている。フランスは今後も武器輸出を拡大していくと思われる。