日本の防衛省はアメリカの軍需企業ロッキード・マーティン社が海上自衛隊のイージス・システム搭載艦（ASEV）に統合されるAN/SPY-7(v)1レーダーのテストに成功した事を発表した。
イージス・システム搭載艦向けＳＰＹ－７レーダーに関する試験の実施について
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防衛省は4月2日、米国ミサイル防衛庁とロッキード・マーティン社が、海上自衛隊のイージス・システム搭載艦向けのAN/SPY-7(v)1レーダーの試験として、初めて宇宙空間の物体を探知・追尾する「First Track試験」を実施し、成功した事を発表。防衛省は「事業の着実な進捗を示すものとして今般の成功を評価しています。」と述べた。試験は3月29日（現地時間28日）、米国ニュージャージー州の地上施設において、イージス・ウェポン・システムと連接した上で、SPY-7レーダーが宇宙空間の物体を探知・追尾する試験を実施。ハードウェア及びソフトウェアが、宇宙空間の物体を正確に探知・追尾し、得られた情報を正常に伝送できることを確認した。これにより、レーダー システムの成熟度が検証され、包括的な性能テストの始まりなった。ロッキード・マーティンのマルチドメイン戦闘ソリューション担当バイスプレジデント、アムル・フセイン氏は今回のテスト成功を受けて「当社は実証済みの統合およびテストプロセスを使用して、日本への納入前にイージスとSPY-7の機能を完全にテストします。この精力的な検査体制によりリスクが最小限に抑えられ、日本が完全に統合され調整されたシステムをできるだけ早く受け取ることが保証されます。」と述べた。
SPY-7 Radar On Japan’s Aegis System Equipped Vessel Achieves First Track Of Objects In Space
イージス・システム搭載艦(ASEV)
イージス・システム搭載艦（ASEV）は、2020年6月に配備計画が中止された陸上配備型イージス・システム「イージス・アショア」の代替として洋上配備型のイージス・システムとして建造される新型イージス艦。基準排水量は12,000t、全長190m、速力は約30ノット（約55.6km/h）、乗員240人。今の海上自衛隊の最新イージス艦である「まや型」の基準排水量が8,200t、全長が170mになるのでASEVはそれより一回り大きいことになり、世界最大級のイージス艦になる予定だ。主要武装には艦首に5インチ単装砲が1門。計128セルのMk.41 VSLを搭載し、対空ミサイルのSM-2/3、対潜ミサイルの07式、巡航ミサイルのトマホークを搭載する。また、現在、開発中の12式地対艦誘導弾能力向上型も搭載される予定だ。防衛省は2隻のASEVの建造を計画、今年度に起工される予定で、3,731億円の予算を計上している。2027年度に一番艦、2028年度に二番艦が就役する予定だ。
SPY-7レーダー
まや型には対空レーダーとして「SPY-1」が搭載されているが、ASEVに搭載される「SPY-7」はSPY-1の5倍の目標追尾能力を持つと開発生産元のロッキード・マーティンは公表している。SPY-7は、SPY-1に比べてはるかに高い追尾精度を保有し、より長距離にわたって、より高速で多数の目標を同時に追尾することが可能。探知能力は既存レーダーの3倍に向上している。陸・海・空のいかなる状況にも24時間365日対応。運用中も修理・メンテナンスが可能で、その間もシャットダウン不要なので監視が途切れることはない。また、拡張性があり、将来、登場しうる新しい脅威にもハードウェアを変更することなく、迅速かつ効果的にスペックを更新することができる。
イージス・アショアの代替えと建造されるASEVの目的はミサイル防衛（BMD）であり、北朝鮮などが発射するミサイルを迎撃することだ。SPY-7が今回、宇宙物体の物体の検知に成功した事で、大気圏外、宇宙を飛行する弾道ミサイルを検知することが実証できたことになる。
ASEVに搭載されるSM‐3の最大射程高度は500kmと国際宇宙ステーションなどがある衛星軌道上のミサイルを迎撃でき、ミサイルをミッドコースフェイズ（中間軌道）およびターミナルフェイズ（終末軌道）に入る段階で迎撃できる。また、海上自衛隊は米海軍が使用する射程240kmのSM-6艦対空ミサイル（RIM-174 Standard ERAM）の購入も決定している。SM-6は対艦巡航ミサイル、終末弾道ミサイルに対する防空能力を提供する。
