戦闘機の取引を引き換えにスウェーデンはNATO加盟の承認を得る

戦闘機の取引を引き換えにスウェーデンはNATO加盟の承認を得る
JAS-39グリペン(NATO)

フィンランドと共にNATO加盟を申請していたスウェーデン。既に加盟済みのお隣フィンランドと異なり、スウェーデンはトルコ、ハンガリーの反対を受けて、NATO加盟が滞っていたが、1月にトルコが承認、そして、ハンガリーも今月、ようやく承認する事が分かり、スウェーデンのNATO加盟が決まる運びとなった。今回、二か国が承認する経緯に至ったもの、それはどちらも戦闘機の取引によるものだった。

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ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、長年、ロシアの脅威に晒されてきた北欧のスウェーデンとフィンランドは2022年5月、NATOへの加盟を申請。NATO加盟には全加盟国の承認が必要になり、一足先に承認を得たフィンランドは2023年4月、31番目の加盟国となった。しかし、スウェーデンに関してはトルコとハンガリーの二か国が承認を渋っていた(フィンランドの承認も最後に承認したのはハンガリー、そして、トルコになる)。トルコは自国がテロリストを認定しているクルド人グループをスウェーデンが支援、身柄引き渡しを拒否すると共に、同国に対し、武器禁輸措置を取っているためとされ、ハンガリーはスウェーデンが自国を民主主義が後退していると批判している事に対する抗議とされている。実際、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は独裁的と欧米から度々批判されており、NATO加盟国でありながら、ウクライナ支援に一切回らず、ロシアと友好関係を維持するなど異質な側面もあった。

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トルコ

トルコのエルドアン大統領は今年1月25日にスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を承認する文書にようやく署名した。この署名直後、アメリカのバイデン大統領はトルコへのF-16戦闘機の売却を承認しており、トルコの承認の背景には、この武器取引があったと推測されている。トルコはF-35共同開発プロジェクトの一国で100機のF-35を購入する予定だったが、NATO加盟国でありながらアメリカの反対を押し切ってNATOの仮想敵国ロシアからS-400防空ミサイルシステムを購入。これによりF-35プロジェクトから外され、トルコはF-35を購入できなくなり、老朽化していたF-16をF-35に置き換える目論見が外れる。そこでトルコはF-16の最新バージョンの購入とアップグレードを決めるも、F-16も結局はアメリカ頼みだった。ただ、トルコがNATOから離れる懸念もあったため、バイデン大統領はF-16については容認していたが、スウェーデンのNATO加盟を認めないなど、未だNATOと一線を画す状況であったため、正式承認を渋っていた。しかし、トルコが加盟を承認したことでバイデン大統領も正式に総額230億ドル規模のF-16の売却を認めることに。トルコはこれにより新たに40機のF-16 Block70を取得し、既存の保有機のうち79機をアップグレードする。

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ハンガリー

ロイター通信などの報道によればスウェーデンのウルフ・クリスターソン首相は2月23日、ハンガリーを訪問し、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談した。会談後、オルバン首相は記者団に対し、スウェーデンとの信頼を再構築していると述べた。両国は軍事協定に署名し、ハンガリーはスウェーデンから新たにJAS-39グリペンC/D多用途戦闘機4機を購入し、現在、ハンガリー空軍が保有する14機のグリペンC/D戦闘機に対する既存のリースおよびメンテナンス契約を延長すると述べた。これで、ハンガリー空軍は合計18機のグリペンC/D航空機を運用することとなり、延長契約によって2030年代まで同機を運用する事になる。ハンガリー空軍が保有する戦闘機はスウェーデンのグリペン戦闘機のみになるので、ハンガリーの防空はスウェーデンに依存していると言ってもよい。今回の契約によって、更に依存度が高まった形だ。関係が悪化していた両国間にとっては、今回の契約は関係緩和に向けた大きな一歩で、これにより、ハンガリー議会が月曜日にもNATO加盟を承認する可能性が高まった報じられている。トルコが一足先にスウェーデンを承認した事で、残るはハンガリーのみとなっていたので、承認の圧力は高まっていた。ウクライナ侵攻後もロシアと緊密な経済関係を維持してきたオルバン首相も、これ以上NATOから孤立するわけにもいかないだろう。更に最近、首相に近いノバーク大統領が性的虐待事件の隠蔽に関わった男に恩赦を与えた事を巡って国内から強い反発を受け、辞任。現政権に対する批判も強まっていた。スウェーデンのNATO加盟承認が議会を通っても最終承認には大統領の署名が必要であり、新大統領を任命する必要もある。

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