次世代戦闘機としてアメリカの第5世代ステルス戦闘機F-35Aの購入を決定していたスイス。しかし、それに反対する左派政党と市民活動家たちは購入反対の署名活動を開始、国民の是非を問うに必要な10万人分の署名を集め、最終的な購入決定は来年の国民投票に持ち越されました。
スイス連邦内閣は昨年6月30日、老朽化したF-5タイガー、F/A-18ホーネットに代わる次期戦闘機として、アメリカのロッキード・マーティン社が開発製造するのF-35A戦闘機36機を50億フラン(約7000億円)で購入することを決定します。選定にはF/A‐18の後継であるボーイング社のF/A-18スーパーホーネット、フランスのダッソー社のラファール、エアバス社のユーロファイター・タイフーンが参加していましたが、「コストが最も安く、メリットが大きい」という理由でF-35Aが選ばれています。F-35Aのユニットコストは2007年時点で2億2100万ドルでしたが、採用国が15カ国に増え、量産化したことで、今では7900万ドルまで下がっているとされます(世界的なインフレで今後は上がると言う話も)。運用費は30年間の運用コストとして155億フランを見込んでいます。
しかし、購入決定後も戦闘機自体の購入を反対していた”軍隊のないスイスを目指す会(GSoA)”といった左派政党はF-35Aはスイスの中立性に違反するとして、再度、購入反対を求める国民投票へ向けたロビー活動を始めます。F-35Aの購入を決定したのも国民投票の結果によるものでした、昨年2021年9月に行われた「60億フランで次期戦闘機の購入」の是非を問う国民投票では賛成派が過半数を占め、購入を決定するも、50.15%と賛成:反対は拮抗しており、僅かなきっかけで賛成から反対に変る可能性はあります。内閣はフィンランドがF-35が購入決定したことを引き合いにだし、中立性には反しないことを訴えましたが、そのフィンランドもNATO加盟を控えており、中立ではなくなります。
スイスは永世中立国であり、世界が戦乱に巻き込まれた二度の世界大戦でも中立を守るなど他国の紛争に関与しないのがスタンスです。更に周辺国に脅威となる国もなく、面積は関東より少し広いくらいで海にも面していない内陸国、空軍がカバーする空域も広くはありません。傍から見れば、高度なステルス機の必要性は感じないのもまた確かです。しかし、運用中の戦闘機は老朽化しており、交換しないわけにもいきません。ちなみに2014年に安価なスウェーデン・サーブ社製のグリペンの購入を計画するも、この時は国民投票で否決されています。コスパの良い、グリペンは拒否され、性能の良いF-35Aを採用しても反対と、何を採用するのが正解なのでしょう。
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