ドナルド・トランプ大統領の下で国家安全保障補佐官を務めたジョン・ボルトンは日曜日に出演したラジオでタリバン政権がパキスタンから核兵器を手に入れる可能性について言及した。イランや北朝鮮への先制攻撃を提言するなど好戦的な姿勢で補佐官を首になった彼らしい意見ではあるが、これは突拍子もない話ではなく、8月には上院と下院合わせた68人の米国議員のグループが、ジョー・バイデン大統領に、タリバンがパキスタンから核兵器を取得しないようにするよう対策することを求めるなど、危惧する者は多い。9月にはパンジシールで核弾頭が搭載可能なソ連製の”R-17戦術弾道ミサイル”をタリバンは手に入れている(長い間、野ざらしだったため使用はできなかった)。
タリバンはパンジシールで核弾頭も搭載できるR-17戦術弾道ミサイルを手に入れた。しかし、長いこと屋外に保管されていたようで使用はできないようですpic.twitter.com/dSALYbZLQ9
— ミリレポ (@sabatech_pr) September 15, 2021
実際、過去には”タリバンが核爆弾を手にいれた”という情報が入ってきたこともある。アメリカとタリバンの紛争が続いていたオバマ政権時の2009年、タリバン構成員の「おしゃべり」を傍受した内容から同組織が核爆弾を保有している可能性があると米情報当局が警告。米中央情報局(CIA)は米都市に対する攻撃を示唆する「おしゃべり」を傍受したことを報告している。情報の精度、信ぴょう性は低かったが、万が一に備え、オバマ大統領は核兵器捜索・解体部隊を現地に派遣している。この時は結局、そのような事実はなく、杞憂に終わっている。
パキスタンの核兵器が盗難されるかもしれない
タリバンがもし核爆弾を手に入れるとした場合、入手先として一番可能性が高いのが隣国パキスタンだ。8カ国しかいない核保有国の一国であり、中東唯一の保有国で160発の核兵器を保有している。そして、同国は旧政権時代からタリバンを支援しており、「育ての親」とも言われており、今回のタリバン復権の際も率先して承認を進めようとしている。とはいえ、さすがに核兵器を「はい、どうぞ」渡すわけがない。だが、パキスタンの核兵器管理には以前から懸念があり、アメリカが危惧しているのは核兵器の盗難、紛失だ。2009年の時も米国の要請を受けてパキスタン当局が核兵器の現状を調査、所在不明の物がないことを確認して脅威がないことを確認している。ただ、実際、核兵器は盗難できたとしても起爆させることは難しいとされている。核兵器は事故の大きなリスクを回避すべく、偶発的な作動、爆発を防ぐため、何十ものシステムと繋がり、複数のプロセスを経ないと作動させることすらできないようになっている。つまり、盗難したからといって、簡単に使用することはできない。それより怖いのは核物質・放射性物質をタリバンが手に入れるこで、それを使った、いわゆる「汚い爆弾」を製造することだ。
汚い爆弾
「汚い爆弾」とは放射性物質をまき散らす爆弾のことで、爆弾としての殺傷能力は少ないが放射能の汚染物質をまき散らすことで、人的被害、地域を汚染させ、政府・都市機能を麻痺させる。これであればタリバンでも製造、使用することが可能だ。だた、タリバンとパキスタンの関係は良好のため、タリバンがパキスタンから盗難することはないと思われる。あるとすれば、タリバンと対立する”イスラム国ホラサン(ISIS-K)”、パキスタン政府の打倒を目指す”パキスタン・タリバン運動(TTP)”の可能性の方が高いと思われる。
Source
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10032795/The-Taliban-hands-150-nuclear-weapons-says-John-Bolton.html
https://www.afpbb.com/articles/-/2882491