ロシアの軍用偵察無人機「Orlan-10」。ロシア軍が使用する主な小型偵察ドローンの一つですが、ウクライナで撃墜されたドローンを分析してみると、とても軍用機とは思えないお粗末な設計が明らかになりました。
近代戦はドローンの活用が戦いを左右すると言ってもよく、ウクライナ、ロシア双方ともに積極的にドローンを戦場に投入しています。ウクライナ軍は当初、民間のドローンをかき集めて活用していましたが、最近では西側の援助もあり、軍用規格の高度なドローンを多数配備しています。方やロシアは侵攻当初はあまり見られなかったドローンをここ最近は積極的に投入しており、それはウクライナ側の撃墜報告からも伺えます。だが、撃墜したロシア軍のドローンを調べたところ、驚愕の事実が分かってきました。
日本製のカメラにペットボトルの燃料タンク
Orlan-10は2010年から使用されるロシア軍の主力の偵察無人機で、最高速度245 km/h、飛行時間16時間、 航続距離1,400km、高度5000mを飛行。電子戦も展開でき、高度な偵察ドローンと目されています。ウクライナ軍はその性能を分析すべく、撃墜したロシア軍の小型偵察ドローン「Orlan-10」の残骸を解体して調べました。
By the way, here’s a video from earlier of the “unboxing” of the Orlan-10 drone. It turns out that these high-tech devices are not only controlled with cheap joysticks, but also equipped with a regular Canon camera, the power button of which is filled with glue. pic.twitter.com/xtkJt5z4XX
— Anonymous Operations (@AnonOpsSE) April 18, 2022
しかし、撃墜した機体を解体してみると、とても軍事ドローンとは思えないお粗末な設計でした。まず、偵察ドローンの肝となるカメラですが、なんと民生品のデジタル一眼レフをそのまま積んだものになり、しかも、それは日本製の「Canon EOS 750D」でした。カメラはダクトテープでプレートに取り付けられ、撮影モードは飛行中に誤って変更されないように接着剤で固定されていました。キャノンもまさか、軍事用に転用されるとは思ってもいなかったでしょう。更に赤外線カメラはHonda製とされています。
実はエンジンも日本製でラジコンや無人機用にエンジンを製作する斎藤製作所の4サイクルエンジンが使用されており、ドローンの肝となる部分はほとんどが日本製です。他の主要部品も中国製とされ、国産の物はほとんど見受けされなかったようです。
そして、解体して明らかになったのが燃料タンクがペットボトルであったことです。ドローン用に作られた特殊なペットボトルというわけではなく、見る限りは市販のもののようです。
考えられる2つの理由
Orlan-10の1機あたりの価格は不明ですが、複数の機体とシステムを含めった一式の価格は10万ドル前後と決して安い価格ではありません。一応輸出もしており、さすがのこのスペックで海外の顧客が買う訳がなく、全ての機体がこのような設計ではないでしょう。では、なぜこうなったのか?考えられるのは2つで、一つ目が汚職です。秘密裏に製造コストを抑えることで、軍幹部と企業側が浮いたお金を横領することはロシア軍では慣習のように行われており、それを表すように今回の戦争でもベストに防弾プレートが入っていない、爆薬が木片だったなど、装備の不備が露呈しています。もう一つが製造するための部品が調達できない点です。2014年のクリミア紛争以降、軍事用の精密機器の輸入制限が掛けられており、更に今回のウクライナ侵攻で範囲が広がりました。製造するためのパーツが手に入らないので、民生品で代用できるものをかき集めている状況なのでは?と言うことです。
ウクライナは取得したOrlan-10をNATOに分析のため提供することを提案したそうなのですが、「分析するまでも無い」と断ったそうです。