オランダは今年9月に2011年に廃止した戦車大隊を復活させることを発表。海軍においては今後10年間で艦艇20隻以上を建造する事を計画するなど、兵器の爆買いを進めている。これらはNATO加盟国として対ロシアを念頭に置いたものだが、中東、東アジアでの武力紛争を防ぐために敵対勢力の抑止に積極的に貢献するための一環になる。
戦車大隊の復活
オランダ国防省は今年9月に発表した防衛白書で2011年に廃止した戦車大隊を復活させる事を発表。10月には早速、ドイツにレオパルド2A8戦車46両を総額10億ユーロで発注する事を発表した。オランダは冷戦時、600両以上の戦車を保有し、欧州NATOでは西ドイツに次ぐ、戦車大国であったが、冷戦の終結、リーマンショックといった経済的要因による防衛予算の削減もあり、保有していた戦車を売却。2011年には戦車大隊自体を廃止していた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻で状況は一変。ギス・トゥインマン国務長官は「戦車は軍隊の戦闘力にとって不可欠だ。重武装を備え、敵の攻撃から身を守ることができる。戦車を再導入することで、オランダは軍の戦闘力を強化する。そうすることで、NATOがオランダに求めていることも満たしす。」と述べ戦車大隊の復活を決定した。オランダは2027年までに戦車を再導入し、2030年までに完全な戦車大隊の運用状態を達成することを目指している。
攻撃型潜水艦4隻など20隻の艦艇の建造を計画
オランダは2014年11月、老朽化したウォルラス級潜水艦を4隻を2025年に新しい潜水艦に置き換える計画を発表した。しかし、その後、計画は一向に進まず、計画は度々遅延。しかし、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、ようやく重い腰を上げ、同年11月に造船会社3社に対し、通常動力の長距離潜水艦4隻の建造計画を要請。入札の末、2024年3月にフランスのNaval社に総額56億5000万ユーロでオルカ級潜水艦4隻の建造を依頼する事を決定した。最初の2隻は10年以内に納入される。オランダはオルカ級にトマホーク巡航ミサイルを搭載し、ウォルラス級にはない海上攻撃能力を持たせる計画だ。
また、同月には自国の造船会社ダーメン社とフランスのタレス社に35億ユーロ以上で新型対潜フリゲート艦4隻を発注する計画を発表。この他、ダーメン社とは10億~25億ユーロで6隻の水陸両用輸送艦、2隻のドック型揚陸艦と4隻の外洋巡視船を発注し、置き換える計画だ。オランダは今後10年間で110億ユーロ以上の投資で水上艦艇20隻以上の建造を開始する予定で、海外領土で活動できる遠征艦艇を強化する計画だ。
F-35飛行隊の強化を睨み練習機を更新
オランダはF-35開発プロジェクトの一国として2012年には早くもオランダ空軍用の機体が完成するなど、2019年から運用を開始。計52機を発注しており、既に40機が納入。2024年中に完納される計画であり、納入ベースでは300機以上のアメリカ空軍、63機のオーストラリア空軍に次ぐ数になり、運用実績は豊富だ。オランダは練習機の老朽化とF-35パイロットのスキルアップと、育成のために練習機の更新を決定。スイス製のPC-7 MKXを8機と2基のフライトシミュレーターを購入する事を決定、2027年の納入を予定している。同機は現在運用中のPC-7 Mk.II のアップグレード版で、最新の航空電子機器、高度なコックピット ディスプレイ、地上訓練システム (GBTS) との統合が強化されており、3つの多機能ディスプレイを備えたグラスコックピット「スマートアビオニクス」は第5世代戦闘機に近い訓練環境を提供する。GBTS には最先端のコンピューターおよびシミュレーター技術に加え、バーチャル リアリティ (VR) や複合現実 (MR) などのツールが含まれており、パイロットに没入型の訓練体験を提供する。
また、ウクライナ及び中東での戦争で防空網の強化が再認識されたことを受け、ノルウェーのコングスベルグ社製の中距離防空ミサイルシステム「NASAMS」の購入を計画。同システムはAIM-9Xサイドワインダー短距離対空ミサイルを使用し、航空機からドローンまで幅広い空中脅威を撃墜する。
ヨーロッパ大陸の西端に位置し、周辺に脅威となる国の無いオランダ。冷戦以降は軍縮を推し進め、10万人いた兵力も3万人まで減っていた。しかし、安全保障環境は一遍。オランダ軍は数十年にわたる衰退を逆転させ、2億6000万ユーロをかけ、人員を増やし、軍の回復力と兵站および防衛力を向上させる。