アメリカ海軍は約半世紀に渡って活躍したキティホーク級空母「キティホーク」と「ジョン・F・ケネディ」の2隻をそれぞれ僅か1セントでスクラップ会社に売却しました。
解体するよりも安上がり
海軍海洋システムコマンド(NAVSEA)は2017年に解体を決定していたキティホーク級空母キティホークと同4番艦のジョン・F・ケネディをEuropean Metal Recycling Group(EMR Group)の子会社でテキサス州にある解体業者International Shipbreaking Limitedにそれぞれ1セント(1円弱)で売却しました。
退役、古くなった空母といえど僅か1セントで売却というのはあまりにも安すぎると思えますが、この規模の空母を解体しようと思うと数十億円かかります。例えば、2020年7月に火災によって損傷したワスプ級強襲揚陸艦ボノム・リシャールの解体費用は3000万ドル(33.5億円)にも上ります。つまり、海軍は1セントで売却することで数十億円の経費を浮かせたことになります。では、解体費用をもらえない解体業者のメリットはというと、解体して得た金属パーツなど再利用可能な資源を取り出し売却することで利益を得ることができ、互いにとってメリットがある取引になります。このような取引は今回が初めてではなく、2014年にはフォレスタル級航空母サラトガの解体作業が僅か1セントで受注(この時は売却ではない)されており、同じく解体業者は再利用可能なパーツを売却することで利益を得ています。
USS キティホーク
キティホーク級航空母艦のネームシップ艦(1番艦)として1961年に就役、ハワイの第7艦隊の旗艦として配備されます。その後、ベトナム戦争に参戦し、1990年代以降は主に中東での任務に就きました。1998年には米海軍横須賀基地を母港にするなど日本にも馴染み深い空母です。2009年に退役すると、予備艦隊として保管。また、原子力を動力としない同艦を博物館として保存しようという声も上がりましたが、2017年10月に予備艦隊からも除籍され、解体が決まっていました。
マイクロエース 1/800 戦艦・空母シリーズ No.6 アメリカ海軍 空母 キティホーク プラモデル
USS ジョン・F・ケネディ
キティホーク級航空母の4番艦として1968年に就役、もともとは原子力として注文されるも通常動力艦に変更されます。最初は地中海に配備され、第四次中東戦争などに関与。その後、インド洋に配置転換され、中東における任務に就きます。1991年の湾岸戦争では口火となる「砂漠の嵐作戦」から参加し、艦載機によって2900回の出撃、114回の空爆を行うなど主要な役割を果たします。2007年に退役すると、キティホークと同様、以降、予備艦隊として保管されると共に博物館としての保存が検討されるも2017年に解体が決定されます。
Source
https://www.businessinsider.com/us-sells-2-aircraft-carriers-1-cent-each-2021-10