ドナルド・トランプ大統領がまた、オバマ政権の決定を覆した。世界的に禁止されている対人地雷について、米軍の使用に関する制限を解除する声明を出したのだ。
対人地雷全面禁止したオタワ条約
地雷は意図しない形で民間人を無差別に殺傷するものであり、埋められた地雷は永続的に負の遺産として残り紛争が終わった後も地域に住む人を苦しませている。このような悲劇を繰り返さないために1997年にカナダのオタワで「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」が採択された。日本も参加する条約になり、現在162か国が参加している。しかし、この条約、アメリカやロシア、中国、インドといった軍事大国は参加していない。しかし、オバマ前大統領は2014年に将来、この条約に参加することを決定し、米軍において「対人地雷を使用せず」という方針を決定し対人地雷の使用は禁止された。しかし、朝鮮半島の有事をふまえ韓国、北朝鮮の軍事境界線については例外としていた。
対人地雷が無いから米軍基地が攻撃される
しかし、トランプ大統領はこの政策に異を唱えた。ホワイトハウスの声明はこうだ。「オバマ政権の方針は、紛争地でアメリカ軍が非常に不利な立場に置かれる可能性がある。トランプ大統領はわれわれの軍隊に対するそのような危険を受け入れない」
米国国防長官ジム・マティスも2017年に「地雷が無いことで米国の部隊のリスクが増大し、米軍の死傷者が増加した」と結論づけている。
つまり、「中東の米軍基地が度々攻撃されるのは地雷が無いためにテロ組織が容易に近づけるからだ」という事になる。地雷が設置されていれば、それが抑止力となり、攻撃を防ぐことができるという推測だ。
とは言っても前述に述べたように対人地雷は大きな危険性を伴う。しかし、米軍の地雷の技術も向上しており、敵の動き感知して、その他の偶発的な爆発を避けたり、1ヵ月間など定された期間を過ぎたら自爆する地雷の開発を行っており、その心配は解消されるとされている。
地雷被害者は中東が多い
地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の統計によると2017年に地雷や爆発性戦争残存物(Explosive Remnants of War: ERW)の被害者は7,239 人にも上る。その多くが中東になり、一番多いのが米軍が駐留するアフガニスタンで2300人なる。トランプはこの地域に更に地雷を設置しようとしている。
トランプは2017年にはクラスター爆弾禁止条約、2019年には中距離核戦力(INF)全廃条約からも脱退しており、暴走が止まらない。