アメリカ空軍及び、特殊作戦軍(SOCOM)は対地専用攻撃機(ガンシップ)の”AC-130Jゴーストライダー”にレーザー兵器を搭載することを計画しています。既にプロトタイプを受領しており、まもなく試験段階に入ろうとしています。
メリットもあるが課題も多いレーザー兵器
アメリカの軍需企業、ロッキード・マーティン社は10月6日、アメリカ空軍に「空中高エネルギーレーザー(Airborne High Energy Laser:AHEL)」の納入を完了したことを発表しました。 同社は2019年1月からAC-130JにAHELレーザーシステムを統合してテストすることに取り組んでいます。
メリット
AC-130Jには現在、105mm榴弾砲、小型の30mmブッシュマスター砲、 空対地ミサイルのAGM-114 ヘルファイヤやAGM-176グリフィン、精密誘導爆弾のGBU-39、レーザー誘導爆弾のGBU-44/Bといった多種多様な兵器を搭載が搭載されています。主な任務はこの圧倒的な火力による敵地上部隊の掃討、味方地上部隊への航空攻撃支援、偵察、味方の護衛護送になります。AHELはこれらの兵器の威力にはまだ、遠く及びません。しかし、AHELには他にはない特性があり、砲弾や爆弾と違って音もなく相手を攻撃し、巻き添え被害が少なく、発電機さえあれば弾薬数の物理的な制限がありません。実用化されればAC-130Jの柔軟性、作戦継続時間が延長されるかもしれません。
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デメリット
しかし、課題も多いとされます。AHELの出力は現在、60Kwしかありません。50Kwでドローン、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾を迎撃、破壊できるとされており、地上兵器であれば問題ないのですが、高高度を飛行、空から地上の標的を対象にするAC-130Jの特性を考えると現状の出力では対地攻撃用には使えません。もちろん、今後、出力は上げる予定です。ちなみに対艦ミサイルをレーザーで迎撃するには300Kwが必要と言われており、艦載搭載用のレーザー兵器で現在実証されているのは150kwです。また、砂や塵、煙によってビームは拡散、吸収され、威力が弱まるという懸念があり、これらの課題を解決する必要があります。過去にも1990年代2000年代にかけてATLやHELといったレーザー兵器システムの開発が行われていましたが実用化には至りませんでした。
米空軍とSOCOMは2022年から、 AHELの地上試験及び、航空機に搭載しての飛行試験を予定しています。ロッキードマーティンはAHELプロトタイプ納品後の実証検証とサポートのための5年間、総額1200万ドルの契約を今年7月に米軍と締結しています。同社は空軍のAHEL以外にも海軍の駆逐艦搭載用の高出力レーザー兵器HELIOSの開発も行っており、今年1月に海軍に納入しています。
Source
https://news.lockheedmartin.com/2021-10-07-Lockheed-Martin-Delivers-High-Energy-Laser-to-US-Air-Force-for-Flight-Testing-on-AC-130J-Aircraft