タイで開催される合同軍事演習 Cobra Gold(コブラ・ゴールド)。ここで行われるジャングル・サバイバルトレーニングの一環で、米海兵隊がコブラの生き血を飲むのが演習の風物詩でした。しかし、動物愛護団体の反対により、この風景はもう見られなくなるかもしれません。
東南アジア最大の軍事演習Cobra Gold
Cobra Gold(コブラ・ゴールド) は1982年から続く米軍とタイ軍主催による東南アジア最大の多国籍軍合同軍事演習です。2005年からは自衛隊も参加しています。水陸両用攻撃、地雷破壊、災害救助、諸兵科連合の実弾演習など様々な演習が含まれていますが、その中に、タイの過酷なジャングルを利用した2週間に及ぶサバイバルトレーニングがあります。そこではジャングルに精通するタイ軍のインストラクターによって、ジャングルを生き抜くための様々サバイバル技術を学びます。サバイバルにおいて大切なのは極限状態に陥った時の食料と水の確保に関する知識です。トレーニングでは実際にジャングルに自生する植物や昆虫を食べます。そして、このトレーニングのクライマックスがキングコブラの生き血を飲むことです。蛇の血は滋養強壮効果があるとして古来よりアジアでは重宝されてきました。タンパク質、鉄分、脂質、アミノ酸など栄養豊富でジャングルにおいては貴重な栄養源であり、水分の摂取方法です。サバイバルトレーニングに参加する米海兵隊員がそこでワイルドに蛇の血を飲む様子はこの演習の風物詩でした。
動物愛護団体が反対
しかし、これらの行為は動物愛護団体にとってはあまり好ましい行為ではありません。動物の倫理的扱いのための動物の権利グループ「Peoplefor the Ethical Treatment of Animals(PETA)」はこれらの行為を反対するロビー活動を2020年より開始。海兵隊総司令官のデービッド・バーガー大将、当時の国防長官のマーク・エスパー、海軍監察総監のジョン・フラー副提督、タイの当局者に手紙を書いて懸念を伝えるも、2020年3月の演習では例年通り、これらの行為は行われました。しかし、2021年の7月12日から8月13日にかけて行われたコブラ・ゴールドでは虫を食べたり、蛇の血を飲むという行為を行いませんでした。PETAの発表によれば、タイ軍の代表が今年のタイでのコブラ・ゴールド軍事演習では、ヘビ、トカゲ、その他の動物の使用または殺害はなかったとも報告。これをうけPETAは「我々の集中的なキャンペーンの後、タイと米国の軍隊が今年のコブラ・ゴールドの演習中に、このイベントの歴史で初めて、いかなる動物も殺さないという倫理的で安全な決定をしたことを誇りに思っています。」というコメントを出しています。
しかし、2021年のコブラ・ゴールドは新型コロナのため、規模を大幅に縮小するなど例年通りではありませんでした。米海兵隊も中止するという公式発表をしているわけではなく、2022年以降も行われないかどうかは、まだ不透明です。
Source
https://www.peta.org/media/news-releases/u-s-marines-nix-snake-blood-ritual-at-cobra-gold-2021-after-outcry/
https://www.military.com/daily-news/2021/08/18/cobra-blood-off-training-menu-us-troops-peta-says.html