ロシアは最近、ウクライナの無人機Tu-143やTu-141を撃墜したことを連日発表していますが、ウクライナ側にとってはこれらが撃墜されても実は痛くも痒くもなく、むしろ、撃墜結果に満足しているとされます。それは何故なのでしょうか?
#Ukraine: A Ukrainian Tu-143 Reys unmanned reconnaissance aircraft was shot down by the Russian forces in #Kharkiv. Such obsolete drones are believed to be used to draw out positions of enemy air defense systems. pic.twitter.com/Ix9FhOMe4N
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) April 12, 2022
TASS通信などのロシアメディアはロシア軍が戦闘が激化するドンパスやハリキウでウクライナ軍のTu-143やTu-141を撃墜したという戦果を連日報じています。しかし、Tu-143とTu-141は共に1970年代に運用が始まった古い兵器であり、実はウクライナ軍はむしろ撃墜されたことで戦果を得たとされています。
Tu-143とTu-141とは
Tu-143とTu-141は共に1970年代に就役した偵察用の無人偵察です。現在では当たり前になった無人偵察機ですが、その先がけとなった兵器です。今のようなプロペラエンジンではなく、発射レールからブースターを点火して発射。あらかじめプログラムされたルートを飛行します。その形態は巡航ミサイルそのものでジェットエンジンによる最大速度はTu-143は時速950km、Tu-141は時速1,100km/hと音速に迫り、その姿と高速飛行する様子はミサイルと見間違います。どうやって回収するかというと、パラシュートによる落下です。
古い設計ということもあり偵察に使う初期のカメラはフィルムになり、回収後にようやく偵察結果が分かるというものでした。その後、何度か改良がなされ、最新のものはデータリンク機能に撮影された映像はリアルタイムで中継されます。
陽動として使用
ウクライナはこれを更に改良してバージョンアップしているとされていますが、それでも現代のドローンと比べるとレーダーに検知されやすく、運用効率も使い勝手も悪く時代遅れであり、簡易的で操作も簡単な偵察ドローンが数多く提供されるなか、無人偵察機としての使い道はあまりありません。そこで、ウクライナ軍はこの2つの機体を陽動として使用することを考えたようです。これらの機体をロシア軍陣地に飛行、防空システムを起動させ、離れた距離にいるバイラクタルTB2などの他の偵察ドローンでロシア軍が発進するレーダー送信波や通信信号を検知するなどして発射地点を割り出して反撃しています。実はこれは2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャンが使用した戦術と同じです。
複葉機アントノフAn2を使ってアルメニアの防空陣地をあらわに
アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ戦争で1940年代に開発されたソ連製の古いAn-2を多数戦場に投入しました。その役割はアルメニアの防空システムをおびき出すための囮です。無人のAn-2をアルメニアの陣地に突っ込ませてわざと迎撃させ、高高度に控えるバイラクタルTB2で防空陣地の場所をあらわにし、そこに砲撃など加えアルメニアの防空システムを無効化し制空権を握りました。An-2には爆薬が搭載されており、仮に撃墜されなくとも、自爆ドローンとして機能していました。ウクライナのTu-143、Tu-141にも爆薬が搭載されていた可能性はあります。
Tu-143、Tu-141の見た目が巡航ミサイルであり、ロシア側は作戦が分かっていても撃墜せざる負えないでしょう。またウクライナ側が航空機に見えるように偽装しているという噂もあります。ウクライナは最近、戦闘機と航空機部品を追加支援として受け取り、20機の航空戦力を得ました。ロシアに反撃する上で空からの支援は不可欠であり、そのためにはロシアの防空網を破壊する必要があります。