ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリがロシア軍によって制圧される前、アゾフスタル製鉄所に立て籠もり、最後まで抵抗を続けたアゾフ連隊。彼らがロシア軍に包囲されながらも82日間という長期に渡って抵抗を続けられたのは実は裏でウクライナ軍のヘリコプター部隊による決死の輸送作戦で食料や武器、兵員が輸送されたいたおかげでした。今回、その時の映像の一部が公開され、輸送作戦の概要が明らかになりました。
アゾフスタル製鉄所で最後まで徹底抗戦をしていたアゾフ連隊ですが、ロシア軍に完全に包囲され、補給もままならず孤立無援に。このままでは近いうちに食料や水、弾薬は尽き、抵抗を続けることは不可能になるところでした。そこで、彼らになんとか補給物資を届けるべく、ウクライナ軍は16機のMi-8ヘリコプターからなる輸送部隊を組織。アゾフスタル製鉄所に向けて旅立ちました。ロシア軍の包囲の中にあるアゾフ連隊に物資届けるにはロシア軍陣地の上空を飛行せねばならず、非常に危険なフライトです。ゼレンスキー大統領のコメントによれば、作戦に参加する乗員の90%が戻ってこれないことを覚悟して任務にあたっていました。
輸送作戦は計7回実施。乗員一人あたり少なくとも2~4回、作戦に参加。ヘリは敵のレーダー探知を避けるために低空で飛行しました。ウクライナ軍の軍事情報部長であるキリロ・ブダノフ氏によれば、全ての輸送作戦が成功し、食料、水、弾薬、そして、部隊を強化するために72人の兵士を送り届けました。また、アゾフ連隊の共同創設者の一人であるジョルジ・クパラシュビリ中佐の救出にも成功しています。
しかし、これは無傷ではなく、5回目と7回目の作戦時に各1機のヘリが撃墜され、撃墜された機体の乗員を救うために向かった1機が撃墜されるなど、計3機を失っています。戦死者数については公表されていません。アゾフ連隊は5月16日に投降、降伏したましたが、輸送作戦が無ければ、もっと早い時期に降伏していたかもしれず、そうなれば、マリウポリのロシア軍の戦力が違う所に向けられていた可能性があります。マリウポリ制圧が思うように進まなかったことでロシアは軍の戦力が分散化、進撃速度が鈍化、5月9日の戦勝記念日で戦果を誇示することもできず、ウクライナ軍は反撃の準備、西側から兵器を受け取る準備できたとされています。
Source
https://mil.in.ua/uk/news/ukrayinski-gelikoptery-sim-raziv-proryvalysya-v-otochenyj-mariupol/