ウクライナ軍の防空ミサイルシステム「パトリオット」が破壊される

ウクライナ軍の防空ミサイルシステム「パトリオット」が破壊される
Bundeswehr

ロシア国防省は9日、ウクライナ軍の防空ミサイルシステム「MIM-104 パトリオット」を破壊したとする動画を公開した。パトリオットは2023年5月の首都キーウのミサイル攻撃の際に損傷したことが確認されていたが、今回の破壊が事実であればパトリオットの損失は初になる。

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ロシア国防省はウクライナ東部ドネツクに配備してあったウクライナ軍の防空ミサイルシステムを破壊したとする映像を公開した。赤外線カメラの白黒映像で判別しずらいが、ロシア側の発表では車列にはソ連製の防空ミサイル「S-300」とアメリカ製の2基の「MIM-104 パトリオット 」の発射装置があったとれ、計3基の防空ミサイルを破壊したと発表している。攻撃は戦術弾道ミサイル「9K720イスカンデルM」によって行われた。イスカンデルは最大500kmの射程を誇り、搭載された電子光学誘導システムにより自律追尾能を備える。ミサイルに内蔵されたコンピューターは標的の画像や情報を受信し、標的情報をリアルタイムで更新。ドローンによって爆破する様子が撮影されていることから、ドローンによって制御され、ピンポイント攻撃が行われたと推測される。ロシア軍は先日5日にもイスカンデルによってウクライナ軍の高機動ロケットシステムHIMARSの初の破壊に成功しており、パトリオットはそれに続く初の戦果になる。パトリオットもHIMARSも性質上、前線から数十km離れた場所に配置されているが、ロシア軍ドローンの偵察能力が向上しているのが伺える。

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痛いパトリオットの損失

ウクライナ側の発表では、パトリオットは先月、鬼神の如き活躍をしていた。2月だけで10機以上のロシア軍機を撃墜しており、その中には早期警戒管制機のA-50もあった。パトリオット防空ミサイルシステムはアメリカのロッキード・マーティン社とレイセオン社によって生産されており、日本を含め世界18カ国で使用されている。パトリオットはミサイルフレーム、レーダー、交戦管制ステーション、発射ステーション、アンテナマストで構成されており、世界で最も優れた防空システムと言われている。実際、ウクライナではロシアの長距離ミサイルの攻撃に対し、90%を超える迎撃率を達成。パトリオットが撃墜したミサイルの中にはロシアが誇る極超音速ミサイル「キンジャール」も含まれている。ミサイルには近接信管のPAC-2と主にミサイル迎撃用のPAC-3があり、射程160kmのPAC-2はロシア軍機の迎撃のため前線近くに配備、Su-34、Su-35、A-50など多くのロシア軍機を撃墜しており、ロシア空軍にとっては天敵になる。

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フォーブスの報道によれば、ウクライナ空軍の防空部隊には3セットのパトリオットが配備されており、各セットはレーダー管制システムと4~8基の発射装置で構成されている。この他、予備の発射装置4基を持っている。1セットがアメリカから、2セットはドイツから供与されており、オランダは2基の発射装置を供与している。今回、失ったのは2基の発射装置なので、幸い、予備によって損失分は補填できそうだが、それでも数少ない防空ミサイルシステム、そして、ウクライナ軍が持つ防空システムとしては最も優秀とされるパトリオットを失ったのはでかい。爆発の状況からミサイルを装填した状態だったと思われ、これも喪失している。パトリオットのシステム一式の新規生産には約2年かかり、生産にかかる費用の総額は約4億ドル(600億円)にも上る、ミサイル一発でも410万ドル(6億円)と非常に高額なシステムだ。損失してもすぐに補充する事は難しい。しかし、ロシア・ウクライナ戦争で需要が高まった事で、生産元のレイセオン社は増産を明言しており、昨年、年間生産台数を12システムにする計画を発表。今年中に5セットをウクライナに引き渡す計画を発表している。

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