40機のロシア軍機を撃墜したエースパイロット「キーウの亡霊(キエフの幽霊)」が戦死したという複数のメディアが報じましたが、ウクライナ軍は”キーウの亡霊の戦死”も”40機の撃墜”もフェイクだとして報道を否定しました。
ウクライナ空軍のパイロットであるステパン・タラバルカ(Stepan Tarabalka)少佐は3月13日、圧倒的劣勢であった制空権を巡る戦闘でMig-29に搭乗し、ロシア空軍と壮絶な空中戦の上、撃墜され、戦死しました。その後、彼の国への奉仕に対し、ゼレンスキー大統領は3月24日、ウクライナの最高の栄誉である「ウクライナの英雄(ゴールドスター)」を授与します。29歳のステパンは2014年に空軍大学を卒業、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年に高級将校である少佐に昇進したばかりでした。
彼の戦死を4月29日、ロンドン・タイムズが取り上げ、「最大40機のロシア戦闘機を打ち落とした”キーウの亡霊”が戦死」と報じました。この情報は拡散され、他の複数メディアも報じました。しかし、この報道に対し、ウクライナ軍の公式Facebookが反応。以下の発表を行いました。
今一度言います!ウクライナコミュニティの情報の基本ルールを無視しないでください。拡散する前に情報源を確認してください。ウクライナの英雄ステパン・タラバルカは「キーウの亡霊」ではないし、彼は40機を撃墜していません。
ウクライナ国防省Facebook
「キーウの亡霊」はロシアの侵攻当初、Mig-29でロシア軍機を6機を撃墜したとして、映像共にSNSで拡散され話題になったウクライナのエースパイロットです。しかし、拡散された映像はその後、ゲームのものと分かり、一人が6機全てを撃墜したという確かな情報もありません。これは開戦当初、キーウの人々、ウクライナを応援する人たち作り上げたヒーローの”虚像”とされています。キーウの亡霊についてもウクライナ軍は以下のように述べています。
”キーウの亡霊”は、ウクライナ人が生んだスーパーヒーローの伝説!これは首都の空を守る第40戦術航空旅団のパイロット達の集合的なイメージです。予期していなかったところに突然現れるものです
ウクライナ国防省Facebook
キーウの亡霊は個人ではありません。そもそも、対空ミサイルが発展、交戦距離が長くなり、航空機同士のドッグファイトが稀になった現代戦において、個人でしかも半月の間に40機の撃墜というのは、ありえない数字です。しかも、Mig-29は1970年代に開発されたソ連製の戦闘機であり、最新鋭とは言えず、ロシア空軍はそれよりも性能が高いSu-35やSu-30、改良されたMig-29を数多く保有。空においては地上よりも劣勢です。