中東イエメン沖の紅海で活動中のアメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦が誤って、味方のF/A-18Fスーパーホーネット戦闘機を撃墜してしまう「フレンドリーファイア」を起こしていた事が分かった。
CENTCOM Conducts Airstrikes Against Iran-Backed Houthi Missile Storage and Command/Control Facilities in Yemen
— U.S. Central Command (@CENTCOM) December 21, 2024
TAMPA, Fla. – U.S. Central Command (CENTCOM) forces conducted precision airstrikes against a missile storage facility and a command-and-control facility operated by… pic.twitter.com/YRWWQJIweP
米中央軍(CENTCOM)は、イエメン時間12月21日、イランが支援するイエメンの反政府武装組織フーシ派の活動を妨害し弱体化させるために意図的な攻撃を実施。イエメンの首都サナアにあるフーシ派支配地域内で、フーシ派のミサイル貯蔵施設と指揮統制施設に対して精密空爆を実施した事を発表した。作戦中、紅海上空でフーシ派による攻撃型無人航空機複数機と対艦巡航ミサイルの攻撃を受けたが、迎撃に成功している。攻撃にはニミッツ級航空母艦ハリー・S・トルーマンからなる空母打撃群が参加、F/A-18E/Fスーパーホーネットが参加した事を明かしている。
しかし、その際、事故が起きた。米中央軍は声明で、22日早朝に紅海上空で米海軍のF/A-18Fスーパーホーネット戦闘機が誤って、味方の攻撃によって撃墜された事を発表。パイロット2人は無事脱出した。パイロットは2人とも救助され、乗組員の1人が軽傷を負った。米中央軍は原因について徹底的な調査をしており、敵の攻撃によって撃墜された物ではない点を強調している。米軍将校2人によると、誤って撃墜されたスーパーホーネットは空爆には参加していなかった。
F/A-18を撃墜したタイコンデロガ級ミサイル駆逐艦ゲティスバーグ
CNNの報道によれば、F/A-18Fスーパーホーネット戦闘機を撃墜したのは米海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦ゲティスバーグ(CG-64)とされ、ハリー・S・トルーマン空母打撃群の艦艇として、1週間前にトルーマンと共に紅海に配備されていた。同艦の司令官は空母打撃群の防空指揮官であり、空母とその護衛艦に対する脅威を探知し、撃退する責任を負っている。
ゲティスバーグはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の3番艦として1988年に起工、1991年6月に就役、これまで数々のミッションをこなしてきた。2015年9月に耐用年数延長プログラム(SLEP)のためにドック入りし、レーダーとイージス兵器システムのアップグレードを含む大規模な近代化改修を実施。推定2億ドル、9年に及ぶ改修の末、2023年2月に9年ぶりに現場復帰。2024年9月からハリー・S・トルーマン空母打撃群の展開を支援するために任務に就いたばかりだった。
1978年から建造が始まったタイコンデロガ級は艦齢40年を迎えた事もあり、2027年までに全艦退役される事が決定。27隻建造された同級のうち、既に20隻近くが退役している。その後、内3隻が2030年以降まで運用が延長される事が決定しており、ゲティスバーグはその内の1隻になる。
フレンドリーファイアによる米軍戦闘機の撃墜は2003年以来
2003年4月、米軍のパトリオット防空ミサイルのオペレーターがイラク上空を飛行中の米海軍のF/A-18Cホーネット戦闘機を敵の発射体と誤認して2発のミサイルを発射。ミサイルは命中し、パイロットが死亡している。イラク戦争では同じく米軍のパトリオットミサイルが友軍のイギリス空軍のトーネード攻撃機を撃墜して、パイロット2名が戦死する事故が起きている。ロシア・ウクライナ戦争ではフレンドリーファイアによる航空機の撃墜が相次いでおり、ロシア航空宇宙軍は2024年12月までに少なくとも15機を友軍による誤射で失っている。ウクライナ軍では2024年8月に西側から供与されたF-16戦闘機の配備が始まったが、初陣を飾った際に1機を失い、パイロットが戦死している。ウクライナ軍のパトリオットミサイルによる誤射の可能性が高いと言われている。