20世紀は戦争の時代になり、二度の世界大戦や世界各地の紛争によって20世紀だけで1億5千万人が戦争によって亡くなりました。21世紀も紛争こそ無くなってはいませんが、20世紀とくべれば頻度は大きく減り、世界を巻き込むような大戦は起きていません。しかし、なぜか各国の防衛費を増えるばかりです。自衛の為の日本の自衛隊でさえ防衛費は5.2兆円(2019年度)。20年前と比べて3千億円も増えています。中国やロシア、そしてアメリカも軍事費は増えるばかりで、2017年の全世界の軍事費は190兆円にも昇り、軍事費は大きな財政負担になっています。しかし、どの国も軍を放棄したり、削減するようなことはあまりありません。そんな中、世界には軍を捨てる持たないという選択をした国があります。ぞれはなぜなのでしょうか。
パナマ
パナマ運河を有するパナマは地政学的戦略上、中南米においても重要な戦略拠点ながらそれを守る軍隊を保有していません。1903年の独立時、パナマは米国と条約を締結しました。これにより、米国によってパナマ運河となる土地の建設、管理、防衛がなされます。しかし、その時、パナマは自国の軍も保有していました。1980年代に軍人のマヌエル・ノリエガ将軍が政権を握ると彼の反米路線、政治腐敗、カルテルとの関係を危惧したアメリカはパナマに軍事侵攻します。いわゆる「パナマ侵攻」です。これによりノリエガは失脚。国民の軍への不信もあり、政府は1994年に憲法修正を採用して軍を解散し、国家保安隊として国家警察、航空海上保安隊、国境警備隊に再編されます。1999年にパナマ運河はアメリカより全て返還されますが、パナマ運河の警備は国家保安隊が担っています。
コスタリカ
コスタリカは中南米に位置する自然豊かな国になります。「Costa Rica」は「豊かな海岸」を意味し、経済、治安も他の中南米と比べると比較的安定しており「中米の楽園」と呼ばれています。コスタリカも以前は軍隊を保有していました。しかし、なぜ、軍隊を捨てたのか。1948年、政治的激動期間の中、野党と与党派の軍による44日間続く内戦が勃発します。この内戦により2,000人の犠牲者が出ました。このような紛争が二度と起こらないようにするために、翌年、新政府は自由で開かれた選挙を保証するだけでなく、国の軍隊を廃止する憲法を立案しました。それ以来、コスタリカは軍を保有していません。1983年には永世非武装中立を宣言します。しかし、それは完全無防備というわけではく、軍事費がかからない代わりに軍事グレードの兵器を備えた沿岸警備隊と警察を有しています。周辺諸国と比べて豊かなコスタリカのその予算は隣国ニカラグアの軍事費の3倍になります。それでも予算は3億ドルと他国の軍事費と比べると格安になります。
モーリシャス
アフリカはマダガスカル島の東にある大小の島々からなる島国になり、イギリス連邦の加盟国の一つになります。100万の人口を抱える国ですが1968年に独立以降、国防の必要性を感じていません。それは地政学的な理由が強く、島国になり、周囲に脅威となる国が存在しないためです。 準軍事組織として約1万人の警察、特殊機動部隊(SMF)、および国家沿岸警備隊を有していますが、予算はモーリシャス国内総生産のわずか0.3%になります。これらの組織は、国防を担うための装備はありませんが、暴動制圧から捜索救助任務に対応する能力があります。また米軍とのテロ対策訓練や沿岸警備隊はインド海軍と密な連携を行うなどして他国との軍事関係を強化しています。
バチカン市国
イタリアはローマ市内にある世界で一番小さな国になり、カトリック教の総本山になります。人口も1000人に満たない数です。そもそも、このような小国で軍を保持する必要性はなく、侵略される可能性もありません。しかし、世界中から信者、観光客が訪れ、ローマ法王が居るこの地の警備は重要です。バチカン市国の治安は、教皇を守るためにスイスの兵士を雇うという長年の伝統があり、常時120人のスイス人警備隊が治安を守っています。所持するのは長い槍と催涙スプレーのみです。そして、彼らは鮮やかな黄色、青、赤で飾られた伝統的な制服と鎧に身を包んでいます。武力は持ち合わせていませんが世界で最もスタイリッシュな治安部隊です。
リヒテンシュタイン
リヒテンシュタインはスイスとオーストリアに挟まれた人口4万人ほどの世界で最も小さな国の1つです。国力が弱い同国は1868年に非武装永世中立国を宣言し、軍を解散して武力に頼らない国づくりを進めます。隣国のスイスと強固な同盟関係を結んでおり、同国の国防はスイスが担っています。第二次世界大戦時はナチスに組み入れられそうになりますがスイスと共に中立を維持します。僅か100人程の小さな警察組織は世界で最も犯罪率の低い同国の秩序を維持しています。
ミクロネシア連邦
オセアニア地域にあるこの国は1914年から第二次大戦が終戦に至るまで、日本の管理下にあり、多くの日本人が入植しました。その影響もあり、太平洋戦争ではトラック諸島などが激戦地となります。戦後、この地域はアメリカ合衆国を受任国とする太平洋諸島信託統治領の一部となり、米国との長い関係を開始します。この地域には米軍基地が建築され、1979年に独立した際には自国軍は優先事項ではありませんでした。1986年には国防と安全保障をアメリカに委託する自由連合盟約国に加盟し、それ以来、同国の防衛は米国の責任になり、自国の軍を保有していません。さらに、ミクロネシアの国民は米国で働くためにビザを必要としません(逆も同様です)。ミクロネシアは防衛を米国に依存している一方で、アメリカ軍に入隊することもできます。実際、ミクロネシア人はアメリカ軍で積極的な役割を果たしており、イラク戦争とアフガン戦争では死者も出しています。
ソロモン諸島
#RSIPF raid home for suspected possession of firearms in #Honiara
— Georgina Kekea (@ginakekea) October 4, 2019
No weapons were found, but occupier taken in for questioning. Information obtained alleged there were arms believed to be kept at the suspect’s residence. Illegal to be in possession of firearms in #SolomonIslands pic.twitter.com/bok4qvX0Ei
同じくオセアニア地域にあるこの国はイギリス連邦の加盟国になります。大戦時にはイギリス植民地としてソロモン諸島保護軍があり、連合国の一員として戦争に参加します。1978年に独立しますが軍は保有していません。ロイヤルソロモン諸島警察(RSIPF)が軍事的要素を担っていますが、1998年に内戦が起こり、2003年にソロモン諸島支援ミッション(RAMSI)としてオーストラリア・ニュージーランド軍が派兵され駐屯し、RSIPFは武装解除されます。2017年には治安状況が安定したとして両軍は撤退しています。RSIPFが今後は国の防衛を担っています。
https://www.nippon.com/ja/features/h00207/
https://www.warhistoryonline.com/history/liechtensteins-army.html