アメリカ軍の宇宙統合軍が発足し、各国の宇宙空間での軍拡、覇権争いが激しくなってきた。日本の自衛隊も来年度には宇宙部隊を発足する。今後は宇宙空間、大気圏を舞台にした各国のにらみ合いが行われるだろう。そこで気になったのが、領空って高度何メートルまでなのだろう?宇宙、大気圏は領空適用されないの?宇宙ならどこでも活動していいの?
領空とは?
まず、領空の定義について確認したいと思う。領空となる空域は自国の国土及び領海の上空の空域を指している。そして、領空に対して、国家は領空権を有しており、外国のいかなる航空機も領空権を持つ国の許可なくして、領空に侵入、航行することは認められておらず、侵入すれば領空侵犯になる。領空権は1944年のシカゴ条約にて国際慣習法として成立しており191か国が批准している。
ちなみに各国は領空とは別に防衛上の観点から領空よりも広い防空識別圏という空域を設定している。領空と比べて国際法上の強制力はないが、事前通告なしに侵入する航空機に関して、軍・自衛隊は証明や識別を求める。それにも従わない場合、不明機などは戦闘機をスクランブル発進して、確認、進路の妨害を行う場合がある。
領空はどこまで?
では、その領空はどこまでなのか。領空の範囲は宇宙空間より下とされており、広辞苑にも領空の空域の範囲としてそのように明記されている。宇宙空間は国家が領有されることが原則禁止されている。それはつまり、宇宙空間であれば、地球と違い、どこの国の上空でも自由に活動して良いことになる。そこで疑問になってくるのが、その宇宙空間とはどこからなのか。一般的には大気圏の外側から宇宙空間とされている。そうすると、また疑問が、その大気圏はどこまでで、高度はどれぐらいなのか。
大気圏の高さ、範囲
地球には薄い大気の層が取り巻いていており、これが大気圏といわれるもの。大気圏には5つの層があり、下から「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」「外気圏」となる。対流圏は民間航空機などが飛ぶ高度になり、高度約10kmまでの空域になる。成層圏がオゾン層が取り巻く空域で約50kmまでの空域、中間圏が約80km、そして、熱圏がオーロラが発生する空域になり、ここで高度は約100kmになる。そして外気圏は高度500kmと一気に広くなる。ここまでが大気圏といわれる空域なる。国際宇宙ステーション(ISS)は高度400kmにあり、実は大気圏内にあるのだ。
ここまで聞くと「高度500kmまで領空なの?」と思われるかもしれないが、国際的には外気圏から宇宙とされており、100kmまでが地球圏、つまり領空になる。国際航空連盟やアメリカ航空宇宙局 (NASA)も100kmまでが地球、101kmは宇宙空間と定義している。しかし、米軍は87kmから宇宙と定義している。
弾道ミサイルは領空外から迫ってくる
各国の宇宙軍の創設の目的は弾道ミサイルの脅威に対して自国を守るため、自国の人工衛星の保護や運用になる。私たち日本人にとって特に気になるのが、近隣某国から度々発射される弾道ミサイルになる。過去には日本本土上空を横断しているが、これら弾道ミサイルは実は高度100km以上の宇宙空間を飛来している。短距離弾道ミサイルと呼ばれるものでも高度100kmを超えており、テポドン2などの長距離弾道ミサイルは高度1000km以上とはるか上空から迫ってくることになる。人口衛星は偵察など用途によって高度は異なるが、通信衛星や気象衛星はなんと高度3万5000kmと地球一周分(4万キロ)に等しいぐらいの距離の軌道上にある。
こうみると領空などちっぽけな存在に思えてくる。これからの時代は各国は領空よりも領空外で各国の活動が盛んになってくるかもしれない。近い将来には宇宙に向けたスクランブル発進などもあるかもしれない。