戦争・アクション系の映画に特化して紹介するミリレポ映画レビュー。今回、紹介する映画は2019年に公開された映画『15ミニッツ・ウォー』。1976年、フランス領のアフリカはジプチで実際に起きたスクールバスハイジャック事件の救出に参加したフランス特殊部隊GIGNの狙撃手を中心にを描いたフランス・ベルギー製作のアクション映画。
ストーリー : 3.5
戦闘・アクション: 3.5
あらすじ
1976年当時のジブチはフランス領で仏憲兵隊や外人部隊を含むフランス軍が駐留していた。2月3日の朝、軍関係者の子供31名を乗せ学校に向かっていたスクールバスがソマリア沿軍解放戦線(FLCS)の4名のテロリスト達に乗っ取られるという事件が発生した。バスジャック後、テロリストは隣国ソマリアへ移動しようとするも国境で仏軍の妨害を受け、タイヤがパンク、ジプチとソマリア国境の緩衝地帯で立ち往生してしまう。彼らは子供たちを人質にとってフランスに対し、ジプチの独立と拘束されている同胞の即時解放を要求。それに応じない場合には人質の子供たちの喉を切り裂くと宣言した。子供たちの担任の米国人ジェーン(オルガ・キュリレンコ)は子供たちを見守るため現地に行き、自ら人質になる。
その頃、事態を重く見たフランス政府は、事件の早期解決のために1974年に創設されたばかりの対テロ特殊部隊GIGN(国家憲兵隊治安介入部隊)の5名を派遣する。チームを指揮するジェルヴァル大尉(アルバン・ルノワール)を始め、集められたのはGIGNの中でもトップクラスの実力を持つスナイパーたち。アメリカ人3人も人質に含まれており、アドバイザーとしてCIA職員一人も同行した。バスの周囲に遮蔽物が一切ないことからジェルヴァルは250m離れた場所から一斉狙撃してバスの中のテロリストを同時排除するという前代未聞の作戦を立案。ジェルヴァルたちは狙撃位置で攻撃命令を待つが、政府は事態を穏便に収束させようとなかなか攻撃命令を出さない。長い膠着状態が続くなか、スナイパーたちは常に狙撃ができる状態で忍耐強く狙撃命令を待ち続ける。テロリストを擁護するソマリア側は国境警備の兵力を増強、そこにはソ連のKGBの姿も。ソマリア側は子供たちを移送するためにバスを手配した。時間が無いと悟ったジェルヴァルは命令が無いまま、攻撃を決意する。一斉射撃でバスの中のテロリストを排除。攻撃に気づいたソマリア側が反撃。バスを挟んで15分間に及ぶ激しい銃撃戦が始まる。彼らは無事、子供たちを救出できるのか。
作品名 | 15ミニッツ・ウォー |
原題 | L’Intervention |
公開日 | 2019年10月 |
監督 | フレッド・グリヴォワ |
ストーリー レビュー
ストーリーは事件発生の朝から事件が解決する翌日までを描いており、ストーリーを描く上ではちょうどよい尺の長さで90分という時間に濃密に詰め込まれており、見ていて中だるみもなく常にハラハラドキドキさせる。物語は基本、GIGN目線で進行され、狙撃の緊張感や彼らの心情が見て取れる。救出までの前振りからの最後の15分間の戦闘は圧巻だ。史実とは細部で異なる部分もあるが、大筋では忠実に基づいて描いており、実際に起こった出来事として見てもらって問題ないと思う。
戦闘 レビュー
1970年代は各国で特殊部隊が誕生した時代で運用や形式もまだ手探りな状況だった、そのような時代背景の中で描かれるGIGN特殊部隊が非常に興味深い。マスコミに悟られないため、彼らは民間機で移動するので現場まで私服なのも分かるが、着いてから、その後の任務も格好は同じ。髭にロン毛、70年代の服装もあいまって特殊部隊にはみえず、まるでヒッピーだ。GIGNは軍属では無いため軍の制服は着れなかったといはいえ、周囲には軍服を着たフランス外人部隊や制服の憲兵隊員が居るのにその姿は異様だ。狙撃という秘匿活動ながら、迷彩装備は一切なしだ。それに隊員の一人は「スコープはガタツキ、曇る」ともいっており今の特殊部隊では叱責ものだろう。現代とは違うちょっとゆるい当時の特殊部隊の様子が垣間見えのは非常に面白い。
実際の戦闘シーンは猛暑、炎天下、標的の周囲には子供たちという絶対に失敗できないという過酷状況下の中、長時間耐えながらスコープ越しに標的を狙いチャンス伺う様子は手に汗握る。狙撃とは本来静かなものだが、その点過度な演出はない点も良く、本格的なスナイパー映画に仕上がっている。
使用した狙撃銃はFR F1ライフル
GIGNの狙撃手たちが使用した狙撃銃は「FR F1」。あまり聞きなれない銃だが、フランス軍の第二次大戦の主力小銃「MAS 36」を狙撃銃に改良したもの。ボルトアクション式で7.5x54mm弾を使用し、射程は約800m、装弾数は10発。このライフルと回転拳銃のマニューリンMR73で5人は機関銃とAK47を持つ数十人のソマリア軍兵士と戦った。