NATO諸国がF-16戦闘機のウクライナへの供与の姿勢を示す中、オセアニア地域の盟主であるオーストラリアはF/A-18ホーネット戦闘機の供与をウクライナに提案しています。
オーストラリアのファイナンシャルレビューの報道によれば、ウクライナの西側戦闘機支援の要請に基づき、開発生産元であるアメリカも交え、保有するF/A-18ホーネット、最大41機をウクライナに送ることを協議しています。ウクライナへの供与にはアメリカの承認が必要ですが、5月にバイデン大統領が同盟国がウクライナにF-16戦闘機を供与することを承認したこともあり、オーストラリアの提案も承認されるという好意的な見方が占めています。
2021年に全機退役したF/A-18ホーネット
F/A-18ホーネットは1970年代にノースロップ・グラマン社によって開発された戦闘攻撃機です。オーストラリア空軍(RAAF)は1984年から1990年までに75機のF/A-18ホーネットA/B戦闘機を購入。最初の2機はアメリカで生産されましたが、残りはオーストラリア国内で生産されています。後継機として72機のF-35ライトニングIIの購入が決まると、2021年までに運用中だった71機全機が退役しています。
30年以上に及ぶ運用中に3度のアップグレードが行われており、2000年から2002年にかけて行われた第1弾では、コンピューター/ナビゲーションシステム、通信機器を新しく置き換え、AIM-9 Sidewinderに代わって、AIM-132 ASRAAM短距離空対空ミサイルを搭載できるように改修されています。2006年までに行われた第2弾では、APG-65レーダーが改良型のAN/APG-73に置き換えられ、地上探索能力が格段にアップ。安全な音声暗号化通信システム、ヘルメット装着式統合目標指定システム(JHMCS)、Link 16 データ リンク 、コックピット ディスプレイが追加されます。最後の第3弾では耐用年数が延長されています。
2021年に全機退役すると、その内25機が同じくF/A-18ホーネットを運用するカナダに売却されます。つまり、オーストラリアには46機の機体が残っているわけですが、その内8機は空軍の歴史資産として保管される予定であり、最大10機が民間航空会社RAVNエアロスペースに売却され、訓練で敵機役を担う予定です。そして、売れ残る30機弱の機体はスクラップになる予定でした。しかし、報道では最大41機を提供すると言っており、博物館に飾るよりもウクライナに送る方が意味があるという意見もあり、保管用と売却する機体は削減されるかもしれません。
オーストラリアはNATOでもありませんし、地理的にもウクライナから大分離れていますが、ウクライナにはブッシュマスター装甲車を提供したり、ウクライナ兵に訓練を行うためにイギリスに軍を派兵するなど、積極的な軍事支援を行っています。F/A-18ホーネットを運用するカナダがウクライナ人パイロットに操縦訓練を提供していることもあり、提供に関して支障はありません。先日、NATOに加盟したフィンランドもF/A‐18に代わる次期戦闘機として、64機のF-35Aの調達決めており、オーストラリアの供与が決定すれば、フィンランドも続く可能性があります。
Source
Russia-Ukraine war: Australia may send Retired RAAF fighter jets to Zelensky (afr.com)