BlackWater(ブラックウォーター)は世界で最も名の知れたPMC(民間軍事会社)かもしれない。米国の戦争には必ず彼らの存在があった。大きな不祥事を起こし現在はACADEMI(アカデミ)という名前で再出発しているが、現在も世界最大のPMCであり傭兵グループになる。
ブラックウォーター時代
ブラックウォーターUSAは1997年に元海軍特殊部隊ネイビーシールズのアル・クラークとエリック・プリンスによって創設された。二人は特殊部隊で培った経験と技術を法執行機関、司法省、および軍事組織に訓練・指導する民間警備会社としてスタートさせる。
社名の由来
「ブラックウォーター:黒い水」という社名は1998年にノースカロライナ州にトレーニング施設を購入したことが切っ掛けになる。その場所は暗い沼地にあり、水は黒く濁っていた。その水に発想を得た二人は社名にブラックウォーターと名付けた。この6,000エーカーのトレーニング施設には、屋内屋外施設、都市を再現した射撃場、人工湖、ドライビングトラックが含まれていました。
政府との契約
創設4年目の2000年には早くも米国政府から最初の契約を受領する。その後、CIAの元高官であるジェイミー・スミスを役員に迎い入れ、より政府との関係性を強化する。そして、2001年に会社が大きく飛躍するきっかけになるアフガニスタン紛争、2003年にはイラク戦争が勃発する。米軍はアフガニスタン紛争が終結しないまま、イラク戦争へ突入。表向きは勝利したがテロリストという不確定な敵との戦いは泥沼化し、広域に渡る戦線に米軍の正規兵だけでは人員が不足していた。そこで当時のブッシュ政権は警護や警備、現地の警察と新しいイラク軍の兵士の訓練を民間に委託することを決定する。同社はまずアフガニスタンではCIA現地本部の警備を受領。2003年、イラクでは政府が契約したPMC60社の内の1社としてイラク統治責任者のポール・ブレマーらの警備業務を2100万ドル(23億円)とヘリコプター2機で受注した。その後もイラク米大使館の警備を受注するなど2003~2006年の間に政府から10億ドル(1100億円)以上を受け取っている。
日本にも派遣
同社は実は日本にも派遣された。米政府と軍需企業レイセオンに雇われ2006年6月に青森県つがる市に設置された弾道ミサイル防衛システム『AN/TPY-2』レーダーの警備として100人が派遣された。
民間人の虐殺
同社の従業員はシールズやレンジャーなど元特殊部隊で構成され警護対象に死者を一人も出さないなど優秀な仕事ぶり定評があった一方で2006年のクリスマスイブに、酔っ払った従業員がイラクの警備員と揉め事になり、警備員を射殺したり、暴虐無人な振る舞いは「イラク人のことを動物扱いしている」という悪評が現地、米軍内にも広まっていた。そして、決定的な事件が発生する。
2007年9月16日、国務省職員の警護任務をしていた同社のグループが、子連れの家族が運転する小型車に発砲した。これがきっかけでイラク警察とブラックウォーター従業員の間で銃撃戦が起こり、17人のイラク民間人が殺害された。従業員はイラク人が最初に攻撃してきたと主張したが、目撃者は家族の車が車列の邪魔にならないようブラックウォーター側が発砲したと述べた。米国とイラク政府の調査の結果、ブラックウォーター側の主張の正当性が認められないとし、6人が起訴され、4人に有罪判決が下った。
社名をXe Services LLCに変更
2009年2月には社名をXe Services LLCに変更するも評判は地に落ち、イラク国内での業務ライセンスがはく奪され、従業員の国外退去が命じられる。稼ぎ頭であった政府との仕事がなくなり、代表のエリック・プリンスを含め経営陣は責任をとって退任する。
ACADEMIに
経営に行き詰った同社は一般投資家の支援をうけてACADEMI(アカデミ)という新会社で再出発する。2014年には元デルタフォースの隊員が設立したTriple Canopy(トリプルキャノピー)と合併してConstellis Groupを設立。合併時には合わせて最大5000人のスタッフを擁し、実働部隊の多くがデルタ、シールズ、レンジャー、MARSOCという元特殊部隊上がりと、世界最大規模の民間軍事会社のグループになる。合併はしたもののACADEMIと名前で引き続き事業を行っている。
創業者エリック・プリンスのその後
会社を追われたエリックは2010年、UAEアブダビの皇太子に雇われ、800名の外国人戦闘員が在籍するReflex Responses(R2)と呼ばれる新会社を設立している。
翌年にはアデン湾での海賊対策のために2,000人のソマリア人の戦闘訓練を開始した。このプログラムは、アラブ首長国連邦を含むいくつかのアラブ諸国によって資金提供され、米国によっても後援された。
エリックは現在、香港でフロンティアサービスグループリミテッド(FSG Ltd)と呼ばれる物流および輸送会社であるの会長を務めている。フロンティアサービスグループは、中国の国有企業CITICグループと香港を本拠とする投資家のChun Shun Koが支援しており、実質、中国政府に雇われている形になる。FSG は、アフリカでの石油およびガス探査事業への中国の投資を助言およびサポートしている。