100日間洋上を彷徨うブラジルの空母サン・パウロ、このままでは朽ち果ててしまう

100日間洋上を彷徨うブラジルの空母サン・パウロ、このままでは朽ち果ててしまう
Photo Marinha do Brasil

ブラジル海軍が保有していた空母サン・パウロ(NAe São Paulo)の処分を巡って、解体業者と国との間で紛糾しており、このままでは腐食が進み、洋上で朽ち果てる危険があります。

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ブラジル海軍から払い下げられた空母サン・パウロを購入し、解体を行う予定だったトルコ企業のMSK Maritime Services & Tradingは最近、船体の所有権を放棄したことを発表しました。サン・パウロは昨年8月、解体のため、ブラジル・リオデジャネイロからトルコに向けて出港するも、ジブラルタル海峡を通過後、船体に600トンという大量の有害物質アスベストが含まれていることから、トルコ環境省がトルコ領内への立ち入りを禁止。そのため、サン・パウロは往復2カ月かけて、リオデジャネイロに戻ることになります。しかし、ブラジル当局も船の入港を拒否。サン・パウロは行き場を失い、ブラジルの北東海岸に沿って円を描くように約100日間、曳航されながら航行しています。その間、ブラジル当局と調整を試みるも反応がなく、MSKも財務と気力の限界に達したとして、空母の所有権を放棄。MSKはこれにより、1000万ドル以上の損失を被ることになります。

空母はブラジル政府に返還されますが、ブラジル連邦裁判所も環境を理由に入港を許可していません。しかし、ブラジル海軍は2018年までこの船を所有しており、昨年、港を離れるまでドッグにあったことを考えると拒否する理由になりません。空母サン・パウロの対応は現在、宙に浮いた状態です。MSKは船体は現時点で安全で環境への影響は無いと述べていますが、このまま洋上に放置すれば、どうなるかわかりません。MSKが所有権を放棄した今、国際法上的にはブラジル海軍、ブラジル政府に法的責任があるとされます。

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空母サン・パウロ

Photo Marinha do Brasil

フランスで1950年代にクレマンソー級航空母艦の2番艦として建造され、フランス海軍で「フォッシュ」という名で使用されていた空母をブラジルが2000年に1200万ドルで購入。名をサン・パウロに変え、ブラジル海軍に編入されます。しかし、既に艦齢50年を迎え、老朽化した船は技術的問題が多く、近代化改修するも事故が多発。17年間の運用期間で航海に出たのは僅か206日に留まり、ほとんど空母としてその役割を果たすことはありませんでした。2030年代まで運用予定だった船は近代化改修を諦め、2017年に退役、解体が決定します。その後、2019年に同艦は最低落札価格125万ドルで競売にかけられ、MSKが落札しました。

1番艦のクレマンソーも2000年代アスベスト問題でトルコでの解体予定がトルコ政府によって拒否されています。その後、インドに変更されるもインドも2006年、アスベストを理由に拒否。最終的にイギリスで解体されることになり、2011年に解体は完了。結局解体まで10年余りを擁しました。

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Source

https://www.aeroflap.com.br/msk-entra-com-pedido-suspensivo-para-atracar-porta-avioes-sao-paulo-em-suape/

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