内海の黒海に面する東欧のブルガリアは消失していた潜水艦艦隊を復活すべく、中古潜水艦の購入を予定しています。
2004年にNATOに加盟した際、軍をNATO基準にするために大改革を行います。しかし、これには多額の費用が掛かるため、部隊を縮小すべく、内海の黒海に面するブルガリアは隣国をトルコ、ルーマニアとNATOに囲まれ海洋に大きな懸念はないとして、2011年までに潜水艦全艦をドック入り、その後、解体するなどして艦隊は完全に失われています。しかし、国防省と海軍はこれを復活させようとしています。これはウクライナ情勢に伴う、クリミア半島を中心とした黒海の不安定化と対ロシアを念頭においたものと思われます。
すでに2隻の中古潜水艦を購入するためにとある国と交渉中で、この国はドイツまたはノルウェーと推測されています。国防省は潜水艦の購入のためにどの予算から資金を割り当てるか方法を探しています。
かつてあった潜水艦艦隊
かつてのブルガリア海軍には4隻からなる潜水艦艦隊が存在していました。ブルガリアが東側のワルシャワ条約機構の一国であった時、ソビエト連邦の支援を受けて、中古の633型潜水艦(NATOコードネーム:ロメオ型潜水艦)4隻が1985年に海軍に編入されます。
633型潜水艦 は1950年代から1980年代にかけて建造されたディーゼルエンジンを搭載した通常動力型潜水艦で、全長76m、幅7m、吃水6m。最大潜航深度は300m。水上での最高速度は15.3ノット、水中では13.2ノットになります。戦後の潜水艦としては能力は決して良いとは言えず、バッテリーは信頼性が低く、潜航時間も短い、8基の533mm魚雷発射管に搭載できる魚雷は古い設計のものになります。ソ連が原子力潜水艦に開発を集中させたこともあり、633型は56隻の建造計画のうち、実際に製造されたのは20隻のみ、ようはお払い箱になった潜水艦をブルガリアに供与した形になります。
配備後はソ連海軍と活発に合同演習を行っていましたが、1991年のソ連の崩壊、2004年に西側のNATOに加盟したこともあり、潜水艦の演習は激減します。3隻の潜水艦がドッグ入り、最後の1隻である潜水艦スラヴァも2010年12月の航行を最後にドッグ入り、そして海軍は2011年11月に潜水艦が全艦が退役したことを正式に表明し、ブルガリア海軍は潜水艦艦隊を失います。3隻はその後解体され、スラヴァはブルガリア最後の潜水艦として博物館という形で保存されています。
黒海の安全保障の変化
しかし、この10年で周辺の安全保障状況は変わりました。最大の懸念はロシアによるクリミアの併合とウクライナ情勢です。クリミアを併合するまで、ロシアの黒海艦隊には旧式の船しかありませんでした。しかし、2014年にクリミアへの侵攻、併合すると、以降、黒海艦隊は近代化、キロ級潜水艦の配備数も増えており、ロシアの脅威が高まっており、潜水艦艦隊の復活は対ロシアが念頭にあると思われます。艦隊復活の明確な時期は決まっていませんが2024年~2027年の間を予定しています。しかし、ウクライナ情勢のよっては早まるかもしれません。
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