ウクライナの防衛企業であるBlackStorm(ブラックストーム)社はウクライナ兵の間で多く使用されているAK-47/74をブルパップ式ライフルに変える変換キット「BlackStorm BS-4」を開発生産しています。これは既に前線の兵士の間で使用されています。しかし、なぜ、シンプルな設計が売りのAKを複雑なブルパップ式に変えるのでしょう。
ブルパップとは
ブルパップとは発射機構とマガジントリガーを後方に配置したライフルのことを指します。通常のライフルはストック、グリップの前、ライフルの中心あたり発射機構を配置していますが、ブルパップではこれをストックと一体化することによって後方に配置。これにより、バレル長を維持しながら、銃の全長を短くすることが可能になります。通常、銃を短くする場合、バレル長も短くなり、その分、飛距離、威力が下がるのですが、ブルパップはそれが維持でき、且つ、短くなったことで携行、取り回しが良くなるのが特徴です。ただ、デメリットもあり、構造が複雑化するのと、発射機構が後ろにある分、排莢口が顔に近く、左右に持ち替えた(スイッチング)際に排莢された薬莢が顔の近くを飛び、当たることが当たる、発射音が近いなどがあります。
塹壕戦の為にブルパップ化
ウクライナの戦場では過酷な塹壕戦が繰り広げられており、塹壕内での近接戦闘も度々確認されています。あの狭い塹壕で戦う上は銃の取り回しが重要で、長いライフルではいざという時、塹壕の壁に当たり反撃できない恐れがあります。かと言って、コンパクトなサブマシンガンでは威力不足で防弾ベストで防がれてしまいます。そこで、必要とされたのがライフルの威力を保持しながら短縮化されたブルパップ式ライフルです。実はウクライナ軍はAK-74ベースの国産ブルパップ式ライフル「Malyuk(マリューク)」と「Vepr(ヴェープル)」の2つのライフルを配備していますが、これらは特殊部隊など精鋭部隊向けで、そう多くは配備されていません。そこで需要が高まったのが部隊に数多く配備されているAK-47/74向けに開発されたブルパップ変換キット「BlackStorm BS-4」です。キット自体は2010年代に開発販売されていました。
この変換キットの特徴は、基本的な設計を変更せずにAK-47/74を短縮化・近代化できることです。両銃は構造が単純で扱いが簡単であり、メンテナンスも楽、耐久性が高いことで知られる信頼あるライフルですが、構成を損なうことなく大幅な改良を加えてブルパップ化します。ストック、ピストルグリップ、フォアエンド、バットを取り外し、ブルパップ用の変換キット装着。この変換キットにより、塹壕で戦うウクライナ兵は優れた機敏性を手に入れ、敵より先に一撃を加えることができます。