中国はここ数年、世界三位の軍事力を持って尖閣諸島、香港、台湾、南シナ海、カシミールの状況を力によって変化させようとしている。これに対し米国を始めとした対中包囲網が布かれ、イギリス、オーストラリアも同調している。日本やベトナム、フィリピン、インドを含め周辺国には中国に敵対する国が多いように感じるが実際のところどうなのだろうか?中国の同盟国、協力国はどれぐらいあるのだろうか?
北朝鮮
1950年の朝鮮戦争で北朝鮮を支援して以降、北朝鮮は中国の庇護下にある。1961年に両国は「中朝友好協力相互援助条約」を締結。いかなる外部攻撃に対してあらゆる手段で直ちに軍事その他の援助を提供することを約束している。
ラオス
南部雲南省と国境を接するラオス。ラオスは中国と同じ一党独裁体制の社会主義国体制を布いている。東南アジアの最貧国といわれるラオスには中国から多額の資金が投資されている。現在、その資金でラオスの首都ビエンチャンから中国国境ボーテンまでを結ぶ「中国ラオス鉄道」を建設。2021年末に開通を予定している。これは習近平が進める一帯一路戦略事業の一つで開通すれば中国の影響が強まるとされている。軍の装備は現在、ほぼ中国製になっている。
カンボジア
かつて親日といわれたカンボジアも中国の影響が色濃くなっている。ラオス同様に多額の資金が投資されているが資金援助の多くが借款、つまり債務・借金であり、債務はどんどん大きくなっている。カンボジア政府高官も金のために中国政府・企業の言いなりといった状況。2019年にはタイランド湾にあるカンボジア海軍の軍港を中国海軍が利用することを中国政府と同国政府で合意を結ぶなど軍事面の連携を見せている。
スリランカ
インド南部にある島国スリランカ。2009年に内戦が終結したが国土復興には多額の資金が必要だった。そこで手を差し伸べたのが中国だった。中国から多額の資金が投資されインフラを復興させたが、それは債務であり、資金返済に困った政府は返済の一部としてハンバントタ港(写真上)を2017年7月より99年間にわたり中国国有企業の招商局港口にリースすることにした。国有企業ということは共産党の息の掛かった企業ということ。インドと対立する中国にとってインド洋に海軍の拠点と地政学上重要拠点となるマラッカ海峡の動線となる航路をおさえた事にもなる。
南アジアではミャンマー、バングラディッシュなど貧しい国に対しては同様に資金援助という名の債務を課して影響力を強めている。
パキスタン
中東の雄パキスタンはかつて米国と親密だったが今は中国の同盟国となっており、一帯一路を進める上で中東の重要なパートナーだ。また中国と同様にインドに対しカシミールでの領有権問題を抱える両国は団結してインドに対抗し、過去4度の中印紛争ではパキスタンは中国を支援している。FC-1(JF-17)戦闘機や90-II式戦車(MBT-2000)など共同の兵器開発を進め、最近ではペルシャ湾に近いグワダル港の運営権が中国に移譲されており、軍事面での関係はとても深い。
イラン
イランは一対一路の重要国でもあり、米国という共通の敵を持つ点で近年関係を強めている。両国は2020年に25年に及ぶ経済・安全保障のパートナーシップ協定を結んだ。中国はエネルギー関連など総額4000億ドル規模の投資を行い、代わりにイランは安価で石油を販売、さらにペルシャ湾に浮かぶキーシュ島を25年間貸し出し、中国関連の設備警備のために5000人の中国兵が駐留することに合意した。ペルシャ湾は世界の石油輸送の重要地点で対岸には多くの米軍基地がある。中国はキーシュ島を軍港利用するものと見られている。2019年には中国、ロシア、イランの三カ国で海軍合同演習を行っている。
中央アジア
かつて旧ソ連の一部であったカザフスタン、 トルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジアの5カ国は陸路で中国と欧州を繋ぐ一対一路の重要地点だ。財政的に乏しい5カ国に一対一路のために巨額の融資を行ったが、あくまで融資で借金だ。キルギスやタジキスタンの対外債務の半分が中国とされており、借金漬けに支配力を高めている。タジキスタンには人民解放軍の軍事基地があるとされている。しかし、進駐した中国企業の傍若無人の振る舞いに国民の反発は強まっている。
ロシア
かつての中ソは同じ社会主義でありながらイデオロギーの違いや国境紛争などで対立していたが現在は友好国となっている。常任理事国として米国、西側に反対して足並みを揃えることも多い。近年では月面基地建設やエネルギー戦略での協力を表明。共同で軍事演習を行うなど軍事面での協力も強まっている。
ベネズエラ
南米の狂犬ベネズエラ。マドゥロ大統領の愚策により、2000%のハイパーインフレを起こすなど社会基盤が破綻するなか社会主義の独裁政治で国民に圧政を布いている。国際世論の反発が強まる中、中国はロシアと並んでマドゥロ政権を支援している。狙いは世界一の埋蔵量を誇るいう石油だ。中国はベネズエラ政府軍に人道的、軍事的支援のために人民解放軍を派遣している。
アフリカ諸国
財政的に厳しいアフリカ諸国に対し、中国は2000年代以降多額の資金を投資して、影響力を強めている。2018年の「中国アフリカ協力フォーラム」では600億ドルの資金援助を表明するなどアフリカへの投資額は世界一だ。これらの資金援助の担保の多くは天然資源になり、中国は安価で資源を手に入れている。インフラ整備の多くは中国企業が請け負っており、実際にアフリカに落ちる金は少ないといわれている。しかし、腐敗や独裁体制が多いアフリカでは政府高官の多くが金で動く。アフリカ諸国の一つ一つの国力は弱いが、国際社会では欧米と同じ一票を持っており、中国に有利に運ぶ投票をすることは多い。新型コロナの問題でエチオピア出身のWTOの事務局長が中国よりだったのも、これらが理由とされている。
一帯一路構想とは
2013年に中国が提唱した広域経済圏構想。かつてのシルクロードを思わせるアジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐ物流ルートをつくって、貿易を活発化させ、経済成長につなげる構想。これには日本やアメリカといった多くの国が賛同した。これを盾に中国は対象となる国に一帯一路のためと称し多額のインフラ投資を行い、実際は借金漬けにして影響力を強めた。