アメリカ国務省は9月1日(月)に中国の軍事力に関するレポート「MILITARY AND SECURITY DEVELOPMENTS INVOLVING THE PEOPLE’S OF CHINA 2020」を発表した。これによると中国及び中国人民解放軍は今後10年間で核弾頭を倍増し、2049年までに米軍と並ぶ軍事力を持つと報告されている。
中国の核弾頭は1000発以上になる
長崎大学核廃絶研究センターの統計(2020年6月)によると、中国は320発の核弾頭を保有しているとされている。その内の240発がICBM(大陸間弾道ミサイル)、60発がSLBM(潜水艦発射ミサイル)、20発が航空機搭載型ミサイルに搭載されている。ICBMは米国に脅威を及ぼす射程を擁するとされ、空中発射型の核ミサイルは戦略爆撃機H-6Nに搭載でき、空中給油を行えば米国本土まで到達できる。レポートでは今後10年間で少なくとも核弾頭の数は2倍になると報告しており、単純に計算すれば640発を超える核弾頭を保有することになる。中国外務省はこの報告に対し「事実を無視し、偏見に満ちている」と非難している。そもそも米国は3800発と中国に比較にならない数を保有している。
米軍と並ぶ戦力に
中国は今や日本を抜き、アメリカに次ぐ世界二位の経済大国となった。世界一の人口14億人を抱える中国は近年、その国力を武器に軍事力を拡大し続け、今では米国、ロシアに継ぐ世界3位の軍事力を擁し、肉薄するロシアを抜き二位になるのは時間の問題だ。特定の戦力に限っていえば既に米国を凌駕している。地上軍の実戦部隊約915,000人は米軍を超え、船舶と潜水艦は米軍の293隻に対し、350隻を保有し、数の上では米軍の戦力より勝っている。
中国軍は、2035年までに近代化プログラムを完了し、共産主義革命100周年である2049年までに「世界最強クラス」の軍になることを目指しているとレポートでは報告されている。
しかし、軍事力が拡大したとはいえ、あくまで量であって、質に関してはまだまだで、最新兵器を揃える米軍に対し、中国軍は未だ1960年代、70年代の兵器が運用されている。例えば戦車に関しては1950年代の第一世代戦車の59式と90年代末期に開発された最新の第三世代戦車の99式(写真上)が混在して運用されている。現在、中国は第4世代の戦車を開発しており、2035年までに第三世代、第四世代に更新されるかもしれない。
中国空軍には2,500機以上の航空機があり、そのうち約2,000機が戦闘機、爆撃機といった戦闘関連の航空機。戦闘機に関してはJ-10A(写真上)、JH-7といった800機の第4世代戦闘機を配備しているとされている。第4世代は米軍でいうとF-15、F-16、F/A-18と同じ世代だ。さらにステルス戦闘機といわれる最新の第5世代に関してはJ-20を配備しており、艦載機用の二機目のJ-31を開発している。これは米軍のF-22、F-35と同じ世代で能力も匹敵するとされている。航空戦力に関しては米軍に並ぶのも近いかもしれない。
中国海軍に関しては、船舶の数は多いが、旧式の船舶が多いとされる。しかし、今年には中国初の国産空母「山東」(写真上)を就役させ、空母は二隻体制になった。今後も3隻の空母の建造を予定している。さらに強襲揚陸艦の075型も就役し、現在二隻目も建造中だ。これには艦載機の発着を可能とする空母機能を追加する改修が可能とされており、空母戦力を増強している。ただ、海軍力に関しては米海軍には11隻の原子力空母と10隻の水陸両用強襲揚陸艦があり、その差は大きい。残り15年でこの差を埋めるのは難しいだろう。
その他、無人兵器にも力を入れており、この分野に関してはロシアと並び世界のトップを走っている。中国軍は人員は削減されているが、無人機を導入し逆に戦力は向上している。
海外展開に関しては現在問題になっている東シナ海をはじめ、東アジア、中東、中央アジア、アフリカに軍港や基地を建設しており、米軍と同じように世界中どこにでも展開できるネットワークを築こうしている。
米国は中国に対抗するために日本、インド、オーストラリアとNATOのような同盟関係の構築を検討している。