防衛省は8月24日から26日にかけて、沖縄南西、東シナ海の宮古海峡を中国人民解放軍の哨戒機と無人航空機(ドローン)が飛行し、スクランブル発進したことを発表しました。この海域では自衛隊と英軍、米軍により共同軍事演習をを行っており、牽制と偵察を狙ったものと思われます。今回の偵察には2機の無人航空機(UAV)、いわゆるドローンの飛行が確認されました。防衛省の発表によると、うち一機はこれまで何度か同空域の飛行が確認されてきた「BZK-005」、そして、もう一機は東シナ海で初めて確認される人民解放軍の最新鋭機「TB-001」になります。
BZK-005
BZK-005は北京航空航天大学と江西洪都航空工業集団有限責任公司によって開発された無人機(UAV)で、2006年に発表されるなど人民解放軍が保有するドローンとしては古いモデルです。BZK-005は、主に長距離の諜報、監視、偵察といったISRを目的としたステルス機能を備えた中高高度の長距離無人偵察ドローンで基本は非武装です。翼幅は20メートル、全長は約10メートル、シングルプッシャープロペラ、スイープメインウィング、および双胴機のツインテールを備えます。飛行高度は8,000m、巡航速度は150~180km/hで飛行時間は最大40時間を有します。性能的には航空自衛隊が購入を予定しているRQ-4 グローバルホークと同等と中国メディアは述べていますが、飛行高度18,000m、航続距離23,000km、速度635km、飛行時間は32時間と劣りますが、全体的な飛行能力はグローバルホークが上回っています。性能的には米軍の初期のドローンのMQ-1 プレデターと同等になります。2018年11月には改良型のBZK-005Cを発表。同モデルはこれまで偵察の運用が主だった同機に武器搭載能力を付与した攻撃機モデルで、最大300kgのミサイル、誘導爆弾を搭載できます。人民解放空軍・海軍合わせて計100機以上を保有しているとされています。
2013年9月に航空自衛隊が日本近海を飛行するのを初確認するなど、これまで何度か自衛隊によって日本近海を飛行する様子は確認されています。
TB-001
TB-001は2016年に創設されたばかりの四川腾盾科技有限公司(TengoenTechnology)が開発したドローンです。Tengoenは新興企業ですが、非常に野心的な企業で中国および世界で急速に市場を拡大しています。その同社のフラッグシップ機が、沖縄空域に飛来した2017年に開発されたTB-001 Scorpionです。TB-001はBZK-005同様、双胴機のツインテールドローンで、各エンジンには3枚羽根のプロペラが装備。後方エンジンにターボチャージャー付きピストンエンジンが採用した3エンジンモデルもあり、短距離離着陸を可能とし、運用能力が向上されています。翼幅は20メートル、全長は10メートル、高さは3.3メートルとサイズ的には BZK-005と同等です。飛行高度8,000m、航続距離は6,000km、飛行時間は最大35時間、巡航速度は300km/hのBZK-005の倍を有し、中国本土から日本領空を往復飛行する上で十分な能力を有し、衛星通信データリンクのセットを装備することで半径3000kmの範囲で通信、制御が可能です。最大離陸重量は2.8トン、最大1000kgのペイロード能力は8発のミサイルと誘導爆弾を搭載でき、小型ミサイルの場合、最大24発搭載できます。偵察任務もこなしますが、 BZK-005と比べ、より攻撃的な機体です。改良したモデルもすでに開発されており、最大離陸重量が3.2トンに増加し、飛行高度が9,500mに向上しています。
今年に入ってサウジアラビア軍が総額17億元(290億円)で TB-001を購入する契約を結ぶなど、海外にも販売されています。
中国国内には100以上のドローンメーカーが乱立、民間・軍用含めドローンにおいては先進国で世界のトップシェアは中国企業が占めています。世界最大の人口を有するも軍は人手不足とされ、それを補うために陸海空において無人機の採用を広げており、現在建造中の新型空日003型には無人機の搭載が予測されています。
https://www.mod.go.jp/js/Press/press2021/press_pdf/p20210826_01.pdf
https://www.mod.go.jp/js/Press/press2021/press_pdf/p20210825_04.pdf
https://www.janes.com/defence-news/news-detail/three-engined-variant-of-chinas-tengden-tb001-uav-makes-maiden-flight