フランス空軍は現在、ラファール戦闘機の次世代規格「F5」の開発に着手している。更にこのF5の僚機（ウィングマン）となる無人ステルス戦闘機（UCAV）の開発に着手したことも発表。第5、第6世代に近しい能力を持つ事になり、F5は別名「スーパーラファール」とも呼ばれている。
10月8日、フランスのセバスチャン・ルコルニュ軍事・退役軍人省大臣は、ラファールの次世代規格「F5」を補完する無人戦闘機（UCAV）の開発開始を発表した。この発表は、フランス戦略空軍（FAS）創立60周年を記念するサンディジエ空軍基地での式典で、フランス空軍宇宙軍（AAE）参謀総長ジェローム・ベランジェ将軍とラファールの開発生産元であるダッソー・アビエーション社の会長兼CEOエリック・トラピエ氏が出席して行われた。
「この無人ステルス戦闘機は、2033年までにフランス空軍の技術および運用上の優位性に貢献するでしょう。戦略空軍60周年、航空宇宙軍90周年を記念する本日、このプロジェクトが開始されたことは意義深いことです。航空学は極めて複雑な分野であり、未来は深く根付いており、イノベーションは経験の上に成り立っています。ダッソー・アビエーションとそのパートナーは、フランス軍およびフランス国防調達庁（DGA）に貢献できることを誇りに思います。彼らの新たな信頼は、私たちにとって名誉であり、義務です」とエリック・トラピエ氏は宣言した。
この無人航空機はラファールから制御する事ができ、ステルス技術、自律制御（マン・イン・ザ・ループ）、内部積載能力を持ち合わせ、非常に汎用性が高く、将来の脅威に合わせて進化するように設計される。
ラファールF5
ラファールは1980年代から90年代にかけてフランスのダッソー社によって開発され2000年から運用が始まった多用途戦闘機。その後、何度か改良が重ねられ、現在の最新版は2019年に開発が始まった「F4」規格になり、長距離での空中ステルス目標の検出を容易にするレーダーとセンサーのアップグレード、ヘルメットに取り付けられたディスプレイの機能向上が行われた。また、通信機器の改良により、ネットワーク中心の現代の戦争により最適化されている。2023年から既にフランス空軍への納入が始まっている。F5はこの次の規格になり、初期研究は今年2024年から始まり、本格的な開発は2026～27年に開始される予定で2030年までの開発完了を目指している。F5にはSCALP巡航ミサイルやエグゾセ対艦ミサイルの後継兵器となる「将来型巡航ミサイル (FCM)」 と「将来型対艦ミサイル (FASM)」、2035年以降に配備予定の極超音速核巡航ミサイル「ASN4G」といった次世代兵器の搭載を可能にし、新世代の運動能力に加え、敵の防空網の抑制や破壊などの任務における生存性を高めるために、適合型燃料タンクとレーダー断面積低減キットが搭載される予定だ。
そして、F5の最大の目玉となるのがウィングマン機能で今回発表された無人ステルス戦闘機との連携だ。ウィングマンは米空軍のNGAD、日英伊のGCAP、仏独西のFCASといった現在開発中の第6世代戦闘機の標準機能と言われる能力で、有人機に自立可能な無人戦闘機を随伴、連携させ有人機を補完するもの。斥候として、敵領域に先行して送り込んで偵察したり、敵の防空システムをおびき出す囮、ミサイルキャリアとして利用するなどして有人機を支援する。ウィングマンはネットワーク能力が高い第5世代ステルス戦闘機のF-35でも開発が進んでいる。
ラファールはもともと、第4世代戦闘機として開発された機体。ステルス性が高く、新しい規格は最新のアビオニクスが搭載されていることから、第4.5世代戦闘機にも分類されるが、ステルス機としての能力はない。F5の能力が最終的にどうなるかはまだ不明だが、完全なステルス化は難しいと思われるが、ウィングマンなど、ネットワーク機能は第5、第6世代と同等の能力があることから「スーパーラファール」という名でも呼ばれている。フランスとしてはアメリカのF-35にセールスで対抗できる機体の開発を目指していると言われている。
フランスは現在、ドイツ、スペインと共に第6世代戦闘機のFCASの開発を進めているが、ラファールは2060年代まで維持されると予測されており、FCASとの棲み分けがどうなるのか気になるところだ。
