ウクライナ情勢が緊迫化している。ロシア軍はウクライナ国境地帯に10万人規模の部隊を集結させており、今も多くの部隊が続々と集結しており、ロシアによるウクライナ侵攻がいつ始まってもおかしくない状況だ。Global FirePowerによればロシアの軍事力はアメリカに次ぐ世界2位、方やウクライナは22位になり、その差は歴然。本格的な侵攻が始まればウクライナは数日と持たないといわれている。では、どれぐらいの戦力差があるのか?Global FirePowerのデータをもとに戦力を比較する。
兵力
ロシア
85万人の軍人と25万人の予備役、25万人の準軍事組織を合わせ計135万人の兵力を擁している。この内、正規軍の兵士約10万人がウクライナ国境に集結している状況だが、いざ侵攻となると倍の兵力が投入されると見込まれている。さらにここにウクライナ東部にいる3万人規模の親ロシア派武装組織とロシアのPMC「ワグナーグループ」が加わってくると思われる。ワグナーの兵力は数千人だが、豊富な実戦経験を有する世界最強のPMCになる。
ウクライナ
20万人の軍人と25万人の予備役、5万人の 準軍事組織を合わせ計50万人の兵力を擁するが兵力はロシアの半分にも満たない。しかし、ウクライナは女性にも対象を広げた徴兵制を敷いており、4400万の人口の約半数が対象になる。また、ロシアの脅威に対し、軍、予備役、準軍事組織に志願する者は増えており、市民の志願による領土防衛軍の数は13万人を超えるとされ、兵力はこの数字より多いと思われる。
陸軍
ロシア | ウクライナ | |
12,420 | 戦車 | 2,596 |
30,122 | 戦闘装甲車両 | 12,303 |
6,574 | 自走砲 | 1,067 |
7,571 | 野砲 | 2,040 |
3591 | ロケット砲 | 490 |
ロシア陸軍
軍事力はアメリカに次いで世界2位になるが、陸軍の軍事力においてはアメリカを凌ぐ1位と言われている。その理由は戦車や戦闘車両といった地上兵器の圧倒的な数だ。第二次世界大戦で戦車大国となったロシアは世界最大の戦車供給国であり、同国には約1.3万両の戦車があるとされる。その内、アクティブな戦車は3000両弱だが、それでも圧倒的な数であり、残りの1万両も稼働できる状態にあるとされる。世界最強と言われるT-14アルマータ戦車の数こそまだ少ないが、主力のT-90、T-80、近代化されたT-72など多くが西側の戦車の匹敵する性能を持っている。更に歩兵戦闘車のBMPを始めとした戦闘装甲車両が3万台、カチューシャに代表される多連装ロケット砲3000両、自走砲6000両など圧倒的な地上戦力と火力を有し、性能も高い。
ウクライナ陸軍
ソ連時代に戦車工場があったウクライナも世界的に見れば戦車大国になり、その数は2600両になるが、ロシアと比較してしまうと大きく見劣りする。主力戦車はソ連時代に開発されたT-80Uをベースに国産化したT-84とその改良型のオプロートになり、ロシアのT-90に匹敵する性能を持っているとされる。しかし、数は少なく、もっとも数を占めるのが旧式のT-64、それ以外の戦闘車両もソ連時代のものになり、旧式化している。近年ロシアの脅威もあり、国産戦闘車両の開発を行っているがまだまだ数は少ない。アメリカからジャベリン、イギリスからはNLAWといった携行式対戦車ミサイルを多数供与されており、対戦車兵器は増強されている。
空軍
ロシア | ウクライナ | |
772 | 戦闘機 | 69 |
739 | 攻撃機 | 29 |
445 | 輸送機 | 32 |
1,543 | ヘリコプター | 112 |
544 | 攻撃ヘリコプター | 34 |
ロシア空軍
空軍においてはアメリカに次ぐ世界2位の規模を誇る。第5世代ステルス戦闘のSu-57はまだ少数だが、第4++世代のSu-35、極超音速ミサイルを搭載可能なMIG-31、Su-27の発展型Su-34など800機近い戦闘機を所有、さらにS-300、S-400、S-500といった世界最高峰の長距離防空ミサイルを擁し、この槍と盾で制空権を確保する。制空権確保後はアメリカを凌ぐ数を擁する爆撃機と攻撃機で地上の主要目標を攻撃。Ka-52、Mi-28といった攻撃ヘリで敵をせん滅するだろう。無人機に関しても先進国であり、偵察から攻撃、電子戦、徘徊ドローン、ステルスと多種多様なドローンを活用してくることが予想される。
ウクライナ空軍
ウクライナの主力戦闘機はソ連時代の1970年代に開発、80年代に配備されたMig-29、同じく同時期に開発配備されたSu-27の戦闘機の数は100機にも満たず、性能、数共にロシア軍が上、ロシア空軍と対峙したとき、制空権を握ることは難しいだろう。防空ミサイルもロシアでは退役が進んでいるS-300の初期モデルがメインであり、防空システムも大きく見劣りする。近年、トルコの無人偵察攻撃機バイラクタルTB2を50機注文、アメリカの無人偵察機RQ-11レイヴンを70機所有するなど無人機の戦力の強化を図っており、 バイラクタルTB2は近年の紛争で大きな成果を上げているがロシア軍に通用するかは疑問だ。
海軍
ロシア | ウクライナ | |
1 | 空母 | 0 |
15 | 駆逐艦 | 0 |
11 | フリゲート艦 | 1 |
86 | コルベット艦 | 1 |
70 | 潜水艦 | 0 |
59 | 巡視艇・哨戒艇 | 13 |
49 | 掃海艇 | 1 |
ロシア海軍
2014年にウクライナから併合したクリミア半島のセヴァストポリを拠点に黒海艦隊が駐留している。クリミア併合前はソ連時代の旧式化した船しかなかった黒海艦隊だが、併合後に近代化と部隊増強を行い、艦隊は一新。ロシア海軍の中でも比較的新しいアドミラル・グリゴロビッチ級ミサイルフリゲート艦3隻、プロジェクト22160哨戒艦4隻、キロ級潜水艦6隻などが配備された。黒海艦隊だけでウクライナ海軍全兵力を凌ぐ戦力を擁しており、開戦すれば海上航路は封鎖されることになるだろう。
ウクライナ海軍
かつて、ロシア唯一の空母「アドミラルクズネツォフ」や中国最初の空母「遼寧(旧:ヴァリャーグ)」を造船した造船所を擁するも、海軍の兵力は微々たるもので38隻しかなく、ミサイル駆逐艦や潜水艦は持っていない。多くが巡視・哨戒艇といった小型船になる。アメリカは計16隻のMarkVI哨戒艇をウクライナに提供することを計画しているが、黒海艦隊に太刀打ちできる戦力は持っていない。
https://www.globalfirepower.com/country-military-strength-detail.php?country_id=russia
https://www.globalfirepower.com/country-military-strength-detail.php?country_id=ukraine